『マイティ・ソー』シリーズのロキ役で大ブレイクし、現在“ポスト ジェームズ・ボンド”の最有力候補として世界中から熱い視線を集めるイケメン俳優トム・ヒドルストン他、世界的人気を誇る英国俳優たちが勢揃いし、SF小説の巨匠、J・G・バラードの原作を完全映画化した『ハイ・ライズ』が8月6日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷他にて全国順次公開となります。
本作の舞台となる新築タワーマンション(=ハイ・ライズ)はラグジュアリーな内装や抜群の眺望のみならず、ありとあらゆる設備が整い、人々の生活の夢を具現化したかのような理想の住居空間。上階に行くにつれ住民が富裕層になっていく40階建ての高層マンションでパーティ三昧の贅沢な毎日を過ごしていたセレブたちが堕落し、じわじわと崩壊していく様子をミステリアスかつアーティスティックな映像美で描いていく。
そして、このほど映画公開に合わせて創元SF文庫より7月11日に復刊発売された原作本が、今月21日、発売からわずか10日で早くも重版決定致しました!

バラードが1975年に発表した「ハイ・ライズ」は、1996年に鬼才デヴィッド・クローネンバーグが映画化した『クラッシュ』、「コンクリート・アイランド」と並んで“テクノロジー三部作”とされる一篇。映画は、ベン・ウィートリー監督の強いこだわりにより舞台設定は70年代そのままに、現代社会への痛烈な皮肉をブラックユーモアたっぷりに描いていく。

原作は、本来バラード世代とは言いがたい10〜20代男女の読者から特に支持が寄せられているといい、東京創元社の小浜徹也氏は、その魅力を「バラードはいつも「早すぎる」作家で、いずれは誰にとっても自明となるような世界を文芸として明示してきたのだと思います。『ハイ・ライズ』は1975年の作品ですが、今から20年後、30年後に読んでも、常に現代的でありつづけるでしょう」と分析。1000戸、2000人もの人が住む高層マンションでは上層階、中層階、低層階の間に揺るぎない階級社会が存在しており、すべての住宅が満室になった時、マンション全体を巻き込んだ暴動が起こり、すべての秩序が崩壊していく。映画版では“映像化不可能”と言われた原作をほぼ忠実に再現しており、原作ファンからの評価も高い。
また、バラードがその生涯に残した全短編を執筆順に収録していく「J・G・バラード短編全集」(全5巻)も東京創元社より8月から刊行されることが決まっており、この夏は『ハイ・ライズ』をきっかけにバラード旋風が巻き起こることになりそうだ。

なお、ヒドルストン演じるラングの特製リバーシブルしおりが付属するのは初版分のみなので、購入を検討している方はお早目に!

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執筆者

Yasuhiro Togawa