塩田明彦監督が、28年ぶりに復活するロマンポルノに挑んだ最新作『風に濡れた女』(※タイトル初解禁) が、この度、ロカルノ現地日程8月3日(水)より開催される【第69回ロカルノ国際映画祭コンペティション部門】へ正式招待されることが決定いたしました。1971年〜1988年の17年間製作されたロマンポルノ作品群を含め、日活ロマンポルノ作品として国際映画祭のコンペティション部門へ選出されるのは、本作品が初となります。なお本情報は、ロカルノ現地時間7月13日(水)11時30分(日本時間7月13日(水)18時30分)に実施される記者会見で発表されます。

塩田明彦監督の初ロマンポルノ作品が【ロカルノ国際映画祭コンペティション部門】へ!
先月逝去した中川梨絵の主演作『恋人たちは濡れた』が【Histoire(s) du cinema部門】に!

第69回ロカルノ国際映画祭のコンペティション部門(the Concorso internazionale/International Competition)へ、塩田明彦監督の最新作『風に濡れた女』が正式招待されることが決定いたしました。本作は、45th ロマンポルノリブートプロジェクトの一環で製作された作品で、今年で製作開始から45周年を迎える日活ロマンポルノが、28年ぶりに完全オリジナルの新作を発表します。プロジェクトに参加する監督陣に、塩田明彦監督のほか白石和彌監督、園子温監督、中田秀夫監督、行定勲監督ら第一線で活躍する監督が揃って参加することから、すでに注目が集まっております。
現在、全ての監督作品がクランクアップしており、5作品全てが完成するのは9月頃を予定しています。

塩田監督自身は、1999年に長編監督デビューした『月光の囁き』『どこまでもいこう』の2作品が、ロカルノ国際映画祭コンペティション部門へ正式招待されており、本映画祭にデビュー当時から注目されていました。 本作は、金豹賞(グランプリ)が対象となる
メインコンペ部門への参加となることから受賞の期待も高まります。
そして今回、日活ロマンポルノの作品として、1つの作品が国際映画祭のコンペティション部門へ招待されるのは、1971年から1988年の17年間に製作された作品を含め《史上初》となり、製作開始から45年を経て、日活ロマンポルノが、成人映画レーベルの枠を超えた「映画作品」として世界に評価された結果を伝えるものとなります。さらに、今回の映画祭では、1973年製作、神代辰巳監督のロマンポルノ代表作の1本である『恋人たちは濡れた』が、同映画祭のHistoire(s) du cinema部門にて上映されることも決定。
本作は、先月6月14日に逝去した女優の中川梨絵さんの主演代表作であり、スイス・ロカルノの地での思いがけない追悼上映となります。塩田監督による『風に濡れた女』は、この中川梨絵さん主演の『恋人たちは濡れた』をリスペクトした作品となっており、映画祭で両作品を鑑賞いただける、またとない機会となりました。
ロカルノ国際映画祭の受賞の発表は、ロカルノ現地日程8月13日(土)となります。

第69回ロカルノ国際映画祭 2016年8月3日〜8月13日(スイス・ロカルノ現地日程) 

【コンペティション部門/the Concorso internazionale(International Competition) 部門】
 『風に濡れた女』(2016年製作、新作ロマンポルノ) 監督:塩田明彦  主演:間宮夕貴、永岡佑
【 Histoire(s) du cinema部門 】
 『恋人たちは濡れた』(1973年製作、旧作ロマンポルノ) 監督:神代辰巳   

1946年に設立され、今年で第69回目を迎えるロカルノ国際映画祭は、スイス南部のティチーノ州ロカルノで毎年8月に開かれる国際映画製作者連盟公認の映画祭。現在では観客が19万人ほど集まるイベントに成長し、ジャーナリスト1千人、映画業界関係者3千人が世界中から集う、ヨーロッパを代表する国際映画祭。同映画祭では12部門中コンペティション部門が3部門あり、映画製作の芸術的技術の向上を目的として上質かつ多様な作品を募集。ワールドプレミアとなる最新作や、映画史に残る名作を上映する特別イベント、世界的に活躍する監督や新しい視点を表現する若きインディペンデント映画監督の作品まで多岐にわたって作品が集められ、11日間で約500本の映画や、ショートフィルムが毎年上映されている。

塩田明彦監督(54)コメント
(ロカルノ国際映画祭からの正式招待について) 
限られた予算と撮影期間、武器として手にしているのは俳優たちの肉体と存在感のみという状況の中で、いかに私たち人間が生きることのすべてを映画の中で描き出すか、それこそが、かつて日活ロマンポルノに関わるすべての作り手と俳優たちが全力を挙げて取り組んだことの全てであり、そこから多くの傑作・名作が産み落とされたことは、いまや日本映画の常識といってもいいいかと思います。しかしその歴史は必ずしも順風満帆だったわけではありません。初期においては映画表現のわいせつ性をめぐって警察権力から度重なる告発を受け、長期に渡る裁判闘争も行われました。いわゆる成人映画というものに対する世間の視線も決して温かいものばかりだったわけではないはずです。だからこそ、私の新作がいまこうして由緒あるロカルノ国際映画祭の場で上映されることには、強く心揺さぶられるものがあります。拙作『風に濡れた女』に対するロカルノ国際映画祭からの評価はまた、これまで積み重ねられてきた日活ロマンポルノの歴史そのものへの評価でもあると思われるからです。その評価のきっかけとして拙作『風に濡れた女』があることをなにより光栄に感じております。
 
(神代監督『恋人たちは濡れた』が同映画祭で上映されることについて) 
今回、『風に濡れた女』と共に、神代辰巳監督の『恋人たちは濡れた』も上映されると聞いたときには心震えました。これは僕が日活ロマンポルノとしても、神代辰巳監督作品としても最も好きな作品のひとつだからです。俳優たちの肉体と、その動きこそが映画に奇跡の一瞬をもたらす、ということをあの映画は僕に教えてくれました。一度観たら決して忘れることの出来ない映画であり、日活ロマンポルノの驚くべきクオリティの高さを世界映画界に対して証明するためにも、最もふさわしい映画の一本なのではないかと考えております。また先日、惜しくも亡くなられた女優・中川梨絵さんを追悼するという意味でも、この上映には強い意義を感じております。今回の上映によって世界が再び、神代辰巳と中川梨絵という偉大な日本の才能を見いだすということ、そして、それが今後の日活ロマンポルノの歴史そのものの再評価へと繋がることを、その末席を汚す映画人として強く期待しております。

ロカルノ国際映画祭プログラム・ディレクター/マーク・ペランソン
日本の映画業界が、再びロマンポルノリブートというプロジェクトの名の元に、日本映画の大事な歴史を繰り返してくれることを大変嬉しく思っています。ロマンポルノというジャンルは、その名前から誤解されることも、嘲笑されることも多かったのではないかと思います。しかし、実際には多くの偉大な監督たちが、初期のキャリアを積んだ場所であり、今度はその場所で、今の時代の監督たちがどのような偉業を成し遂げてくれるのかを見ることがとっても楽しみです。「風に濡れた女」は、憧れの作品にオマージュを捧げつつも、ロマンポルノというジャンルの新しい第一歩を踏み出しており、大変感銘を覚えました。

ロカルノ国際映画祭プログラム・ディレクター/カルロ・シャトリアン
「風に濡れた女」は、平凡な撮影技法を使わずチャレンジングな方法で、女と男の関係を大胆に描写したなんとも破天荒な作品です。私にとって本作は、ロマンポルノへのトリビュートであるという以上に、新たな1つの作品として際立った存在だと捉えています。塩田監督のオフビートな笑いは、人々の心の扉を開く素晴らしいものだと思います。

2016年11月20日に45周年を迎える<日活ロマンポルノ>とは?

「日活ロマンポルノ」は、日活が1971年に打ち出した当時の映倫規定における成人映画のレーベル。
 1971年11月20日に『団地妻 昼下りの情事』(西村昭五郎監督/白川和子主演)と、『色暦大奥秘話』(林功監督/小川節子主演)の2作品が初めて公開。「10分に1回絡みのシーンを作る、上映時間は70分程度」などの一定のルールと、製作条件を守れば比較的自由に映画を作ることができたため、チャンスを与えられた若手監督たちは限られた条件の中で新しい映画作りを模索し、さまざまな表現に挑戦できました。また、通常3本立ての公開を維持するため量産体制を敷いたことにより若い人材の育成を促進。中平康、鈴木清順、齊藤武市、今村昌平らのもと助監督として経験を積み、ロマンポルノの中で作家性を発揮した監督として、神代辰巳、小沼勝、加藤彰、田中登、曽根中生といった才能が生まれ、あらゆる知恵と技術で「性」に立ち向い、男性向けに作られながらも、女性とその生き様を深く美しく描くことを極めていきました。このほか、ロマンポルノから出発した監督として、村川透、根岸吉太郎、金子修介、石井隆といった方々がいます。製作終了した1988年までの17年間に、約1,100本もの作品を継続して公開し続けた結果、映画史において、最もセンセーショナルな作品レーベルとして、現在も国内外で高く評価されています。

新作製作 powered by BSスカパー!
2016年、ロマンポルノが生誕45周年を迎えるにあたり、これまでロマンポルノ作品を監督していない、第一線の監督たちによる完全オリジナルの新作ロマンポルノを、BSスカパー!をパートナーとして製作開始いたしました。さらに、新作の劇場公開に併せて、BSスカパー!(BS241/プレミアムサービスCS585)にてR15+版の放映を行います。 

日活ロマンポルノ公式サイト http://www.nikkatsu-romanporno.com

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執筆者

Yasuhiro Togawa