この度、第 67 回ロカルノ国際映画祭の新人監督賞スペシャル・メンションに輝きましたドキュメンタリー映画『人間爆弾「桜花」 -特攻を命じた兵士の遺言-』が 8 月下旬よりシアター・イメージフォーラムにて公開されることが決定しました。

林冨士夫は、人間爆弾と言われた特攻兵器「桜花」の第一志願兵であった。攻撃部隊の正式名称は、神雷部隊桜花隊。当時、海軍大尉であった彼は、上官から出撃隊員を選ぶよう命じられ、隊員の中から選出し、その名を黒板に書いていった。多くの同志たちを死へ送り出すという究極の不条理の中、自分の出撃を待たずして、戦争は終わりを迎えた。敗戦の混乱、激動の時代の中で、彼はあの時代に向き合い続けること、凝縮された神雷部隊での 1 年半の記憶を語り継ぐことを自身に課していく。
そんな中、天皇に対し「特攻に散った若者たちへ、一言でも謝罪、感謝の発言がなかったことは、非常に残念なことと思いました。その一言くらい言われるのが、人間天皇という事になるのではないか」と無念の思いを吐露するのだった——。

監督は、第 69 回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門の審査員賞を受賞した深田晃司監督作『淵に立つ』、河瀬直美監督作『あん』『2 つ目の窓』、黒沢清監督作『岸辺の旅』、今村昌平監督作『カンゾー先生』などをプロデュースした澤田正道。今作が初監督作となり、第 67 回ロカルノ国際映画祭の新人監督賞スペシャル・メンションに輝いた。30 年以上フランスに住み、日本を俯瞰的に見つめてきた澤田が、日本人としての死生観、そして戦争という記憶を、林冨士夫との対話の中で静かに描き出す。既に肉体的な限界を迎えつつあった林氏から、澤田に許された時間は 8 日間。
カメラは林氏のみを捉え、その息遣い、その沈黙から、彼の背負ってきた記憶を映し出していく。
本作は、亡き特攻隊員に語りかける林冨士夫の遺言ともいうべき、鎮魂のドキュメンタリーである。戦後 71 年を迎え、その沈黙と記憶が私達の心に刻みこまれる。

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執筆者

Yasuhiro Togawa