キリスト教はサンティアゴ・デ・コンポステーラ、イスラム教はメッカ。聖地巡礼はいつの時代にも人の心を捉えるけれど、チベット仏教で有名なのが“五体投地”という最も丁寧な礼拝方法で進んでいく巡礼だ。映画『ラサへの歩き方〜祈りの2400km』は、その “五体投地” で聖地ラサ、そして聖山カイラス山へ、2400kmもの距離を約1年かけてすすむチベットの小さな村の村人11人を描いた世界初のチベット巡礼ロード・ムービー。プサンやロッテルダムなど国際映画祭で上映されるたび、大きな話題を集めてきた。

“五体投地”とはどんなものなのか。言葉で説明すると、「両手・両膝・額(五体)を地面に投げ伏して祈る」となるが、このたび完成した予告編を見れば、これで2400kmを進むのかと、その光景に驚く人もいるかもしれない。

映画は、小さな村に暮らす一家の家長ニマが、叔父の願いを叶えようと巡礼を決意し、老人、妊婦、幼い少女を含む3家族11人の村人たちが旅にでるところから始まる。一見、過酷に思える巡礼なのに、画面に映る村人たちの表情は楽しそう。五体投地の巡礼で大切なことは、ズルをしないことと、他者のために祈ること。そんなシンプルな心の持ち方が彼らを幸せにしていることが伝わってくる。

劇版的な音楽なし、村人たちの祈りの声と彼らが歌うチベットの歌だけのシンプルな構成の予告編。『こころの湯』などで知られるチャン・ヤン監督が20年来憧れていたチベットの人たちの“心のありかを旅する映画”。リチャード・ギアやジェット・リーらハリウッドスターだけでなく欧米にも中国にも影響を受けている人がどんどん増えているというチベット仏教だが、その心のありかを見つめていけば、まさしく現代人が求めているものがありそうだ。

予告編::https://www.youtube.com/watch?v=F7REtRzg3hA

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執筆者

Yasuhiro Togawa