普通のひとたちが、ダンスで変わってゆく時間。

こころとからだを自由にするドキュメンタリー!

ドキュメンタリー映画で大ロングラン(BOX東中野にて2001年7月〜2002年1月)を記録した『こどもの時間』や『トントンギコギコ図工の時間』で、子どもたちの生命力や芸術性を描いて感動を呼んだ野中真理子監督。前作から11年が経った今年、待望の第3作目がついに公開となる。新作のテーマは、美しい大人の女性の「ダンスのある暮らし」。

ダンサーの村田香織さんは、ショーディレクターの仕事をきっかけに、近年は水族館のショーと、水族館スタッフのトレーニングコーチを務めている。「新江ノ島水族館」のイルカショーの振付からはじまり、スカイツリーのふもとにある「すみだ水族館」のスタッフには、お客さまとのコミュニケーションを円滑にしよう、というレッスンを日々おこなう。からだを動かすと、こころはどう動く?気持ちをあらわすにはどう動けばいい?動物好きでナイーブなスタッフがだんだん笑顔になってゆく時間。香織さんは週に一日、老いた母の介護にも通っている。日がな一日ベッドですごす母の、「できません」「だめです」の言葉をどう受けとめればいい?母と話し、母に触れる。どうしたいのかを感じる。これも母と娘のデュエットダンスだ。

映画は、香織さんの日常生活を追いかけながら、私たちのこころとからだを自由にしてくれるダンスの秘密を探っていく。日本で初めてイルカショーを実施した、歴史ある新江ノ島水族館と、国内最大級の屋内開放水槽を持つすみだ水族館の生きものたちの、のびやかな姿も余すところなく映しだす映像も本作の見どころのひとつ。

撮影は多くのドキュメンタリー番組やTVドラマでギャラクシー賞を受賞している名カメラマンの夏海光造、音楽はNHK連続テレビ小説「あまちゃん」で知られる大友良英、江藤直子が担当し、同じくNHK連続テレビ小説「まれ」で土屋太鳳演じるヒロインの少女期を演じて一躍注目を集めた、松本来夢がナレーションとして参加。

このたび公開された予告編では大友良英によるギター・ソロが流れるなか、イルカやチンアナゴ、揺れる木々、走る電車の車窓から見える景色を捉えながら、村田香織さんのダンスする身体と、香織さんの認知症の母との対話を垣間見せてゆく。

ダンスとは感じること。どんなに大変でも、生きることを肯定すること。やわらかく背筋の伸びた香織さんの日常に、私たちのこころとからだをやわらかく自由にする、ダンスの秘密が見えてくるはずだ。

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執筆者

Yasuhiro Togawa