昨年の東京フィルメックスにて上映され、大反響を巻き起こした『クズとブスとゲス』が7月30日(土)より渋谷ユーロスペースにて公開されることが決定しました

女を拉致監禁し、裸の写真をネタに強請(ゆす)りで生計を立てるスキンヘッドの男。
ヤクの運び屋から足を洗ったものの、ストレート過ぎる性格が災いして過ちを繰り返すリーゼントの男。
自己主張が苦手で、流されるがまま生きてきた結果、苦界にはまり込んでしまう女。社会適応力ゼロな彼らが繰り広げる血と暴力と涙の物語を、凄まじい迫力で描き切った本作。

監督・脚本は、自主制作映画『青春墓場』三部作(08・09・10)が高く評価され、最終作『青春墓場〜明日と一緒に歩くのだ〜』は、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭オフシアター部門グランプリを受賞。若干24歳にして『東京プレイボーイクラブ』(11)で商業映画デビューを飾った異才・奥田庸介。

華々しくデビューしたものの、その後思うように作品を撮れず、日雇いや夜の世界に身を投じくすぶっていた彼が持てる全てのエネルギーを注入、本作は4年ぶりの長編新作となります。

自身の率いる「映画蛮族」のスタッフと共に原点である自主制作の現場に立ち戻り、製作資金はクラウドファンディングによって調達。スポンサーや映画会社の制約と庇護から一切解き放たれ、それゆえに、ひりつくようなリアリティと切実感が細部まで横溢。

しかも主役のスキンヘッドの男を自ら演じており、体重を15キロ減量、眉を剃り落とし、鼻ピアスを着ける肉体改造を施し圧倒的な存在感を見せます。
その徹底ぶりは鬼気迫るものがあり、アクションはすべてリアルファイト、流れる血は本物、本番中にビール瓶で自ら頭をカチ割って12針も縫う大けがを負い、そのまま病院送りになって撮影が中断したほど。

この通常の映画づくりを無視したような規格外の熱量に誰もが度肝を抜かれ、第16回東京フィルメックスではスペシャル・メンションを授与され(奥田庸介個人に対し)、第45回ロッテルダム国際映画祭にも正式出品されました。

共演は直情バカのリーゼント男に、『青春墓場』三部作時代から奥田映画となじみの深い板橋駿谷。
その恋人で理不尽な状況を必死に生きる女に、オーディションで選ばれ、これが本格的な女優デビューとなる岩田恵理。
さらに『その男、凶暴につき』(89)以来、多くの北野武作品や多数のTVドラマで活躍する芦川誠が、3人の運命を掌で転がすヤクザ役で出演しています。

公開決定にあたり、奥田監督のコメント
この映画を例えるならば、15の夜に行き先も分からぬまま暗い夜の帳の中を盗んだバイクで走り出す代わりに、28の夏に生き方も分からぬまま辛く無意味な人生の途中で怒った奥田が暴れだす、といった感じだと言ったら分かりやすいでしょうか。最早映画とは呼べないぐらい個人的なシロモノなのですが、薄汚く自己正当化しますと、今のこの日本文化の有り様だからこそこんな映画があって良いと思います。

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執筆者

Yasuhiro Togawa