チベットの小さな村の村人11人が、聖地ラサ、そして聖山カイラス山へ。はるか2400kmをほぼ1年かけて“五体投地”で行く巡礼旅を描いた『PATHS OF THE SOUL』(英語題)が『ラサへの歩き方〜祈りの2400km』の邦題で、7月シアター・イメージフォーラムを皮切りに全国順次公開が決定、日本版ポスタービジュアルが解禁となった。

『ラサへの歩き方〜祈りの2400km』はトロント国際映画祭でプレミア上映され、観客だけでなく各国の映画バイヤーや映画祭関係者を驚かせたチベット・ロード・ムービー。なにしろ、“五体投地”という「尺取り虫のような」とも説明される、慣れてない人間なら5分続けるだけでも大変な礼拝の方法で、自分の村から約1年かけて2400kmもの巡礼する村人たちの旅を描いているのだ。テレビの旅番組などで、チベットのラサにある有名なチョカン寺で五体投地を繰り返している人の姿を見たことがある人もいるかもしれない。しかし村を出発するところから、五体投地で進むロード・ムービーは世界で初めて。

映画は、この巡礼旅によって、チベットの人たちの生き方を浮かび上がらせていく劇映画だが、実際の村人が自分自身の役を演じ、しかもラサまでの道のりを五体投地で進む姿をリアルに映したと言うから驚き。トロント、プサンと映画祭で注目され、ロッテルダム映画祭では前評判の高い『地雷と少年兵』と最後まで観客賞を争うほどの話題を呼んだ。

この度完成したビジュアルは、ラサのポタラ宮をバックに、11人の巡礼メンバーの中の最年少の少女が一生懸命に祈りながら五体投地をする姿がシンボリックにデザインされたもの。そこに「五体投地のルール」として書かれたコピーが興味深い。①合掌する。②両手・両膝・額(五体)を大地に投げ出しうつ伏せる。③立ち上がり、動作を繰くり返して進む。④ズルをしないこと。⑤他社のために祈ること。チベットの人たちの考え方が伝わってくるようだ。

監督は『こころの湯』『胡同のひまわり』のチャン・ヤン監督。二十年来のチベットへの憧れを映画にした。田舎でのシンプルライフや、断捨離などオルタナティブな生き方が注目されている日本で、チベットの人たちの「祈る。歩く。眠る。笑う。」というシンプルな生き方が驚きと感動を与えてくれる本作、何やらブームになりそうな予感がする注目作だ。

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執筆者

Yasuhiro Togawa