この度、映画『ラスト ナイツ』のブルーレイ・DVDが5月3日に発売となります。本作は、『CASSHERN』『GOEMON』で無類の世界を築き上げた紀里谷和明監督のハリウッド進出作で、クライヴ・オーウェン、モーガン・フリーマンら名優が集結し、「忠臣蔵」を題材に高潔な騎士の魂とその戦いを描いたアクション大作です。今回、ブルーレイ・DVDの発売をうけ、紀里谷和明監督にオフィシャルインタビューを行いました。

『ラスト ナイツ』ブルーレイ・DVD 5月3日発売 紀里谷和明監督コメント
■今回、監督が、武士道、騎士道に惹かれた理由は?
紀里谷和明監督(以下、紀里谷):これって、恋愛みたいなものですよね。自分のタイプがどうのこうのと語ってみても、実際にどんな子に惹かれるかは分からないわけで、ただ好きになってしまった、という感じです。脚本を読んで、これだ、これを映画にしたいと思いました。

■物語としてはシンプルですが、だからこそ力強い作品です。恋愛と同じだということですが、実際に忠義をテーマにした本作を撮り終え、振り返ってみて思われることは?
紀里谷:今回監督作が3 作目。1作目(『CASSHERN』)からは12 年目です。やりたいことを全部やれたという感覚はあります。これまでは、やりたいけどできないということもありましたが、『ラストナイツ』ではやりたいことをできました。

■チェコで大規模なロケをされたりといったことでしょうか。
紀里谷:本当に好きな脚本と出会えて、制限はあってもそのなかで十分な時間をとって、十分なお金をかけて撮ることができました。

■主人公のライデンにはクライブ・オーウェンさんのことが最初から頭にあったと聞いています。なぜ彼がいいと思われたのでしょうか。
紀里谷:好きな役者だっだからです。どういう点ということを言葉にするのは難しい。好きなんですよ、とにかく。
それしか言えないです。それ以上もそれ以下もないです。この映画を作りたいと思ったときに、ぱっと頭に浮かんだのがクライブ・オーウェン。第一希望でした。モーガン・フリーマンもそうです。

■モーガン・フリーマンさんの存在感も素晴らしかったです。
紀里谷:彼には圧倒的な説得力がある。お芝居がお芝居に見えない。映画ってウソだとわかって観に行くわけですが、それでも泣いてしまったりしますよね。それってそうした人たちの説得力のおかげだと思うんです。その説得力が圧倒的でしたね、モーガン・フリーマンは。ウソを信じさせる力がある。

■ハリウッド進出第一弾から大スターと組みました。
紀里谷:僕としては、一緒にやりたいから声をかけただけです。スターだとかは関係なく。逆に声をかけない理由がわからない。ビビっちゃうということでしょうか?でも監督というのは、自分のビジョンを出す仕事。ラーメンを食べたいのにそばを食べに行くという感覚は分からないですね。

■今回、映像面で黒をベースにされていましたが、監督としてはこの選択も特に新しい面を出したという意識はないのでしょうか。
紀里谷:ないです。単純に今回の作品に合っていると思ったからそうしました。たまにキャリアデザインを語る監督もいますけど、ジャンルにこだわるとか、賞にこだわるとか、世間からどう見られたいとか、そういうのは僕にはありません。

■本作は30 カ国で公開されました。武士道的なスピリットが世界に受けた理由はどこにあるのでしょう。
紀里谷:描かれているのは基本的なことですからね。武士道というのも、日本が言っているだけで、内容は、自分を犠牲にしてでも守れるものがあるか、ということ。それはアメリカでも普通にある感覚です。

■ライデンのラストについて、外国の評判はどうでしたか?
紀里谷:映画っていろんな人がいろんなことを言うものですから。でもそもそも、外国どうのこうの、という視点が僕にはないです。

■スタッフ、キャストも多国籍な面々が集まりましたが、そこは最初から目指していたのでしょうか。
紀里谷:逆に日本が日本人だけで作っているのが不思議です。僕は日本にいるから日本食しか食べません!みたいな考えは、もったいないと思います。いろんな国のスタッフがいるからといって、実務的な苦労もなにもないです。
外国に行ったら、どこから来たんですかなんて言われません。能力がある人が適した部署につく。それだけです。
そもそも国境なんて概念は僕にはないですから。

■本作では中世と思われる架空の国が舞台で、人種もさまざまでした。ここに意識的な思いは?
紀里谷:それは意識的にやりました。それがあるべき姿だと思ったので。

■実際に映画監督として、これだけの国際色豊かなスタッフ、キャストと仕事をされたのは初めてだと思います。
手ごたえは?
紀里谷:普通ですよ。美術部や衣装部、映画以外のこれまでの仕事も日本人でなければなんて意識していませんでした。経済的な理由でできないということはありましたけどね。

■3 作目にして普通になれたということでしょうか。
紀里谷:そうです。それも含めてやりたいことができたということです。本来、国境なんてないのがあるべき姿だと思います。僕は15 歳から外国に行っているので、それが普通なんです。

■アクションシーンでのご苦労は?
紀里谷:アクション監督が僕のビジョンを形にしてくれました。やっている本人たちは大変そうでしたけど。今回はクリーンな、そぎ落としたアクションだったと思います。

■クライマックス、城壁に突入していくシーンのアクションや映像も圧巻でした。
紀里谷:あそこは仕掛けを考えなければいけませんでした。問題を自分で作って自分で解かなきゃいけないから大変ではありました。難しいことを選択しないとお客さんは喜んでくれません。例えば綱渡りをしていても、下に安全ネット敷いてやるより、高層ビルの間を歩いたほうが見たいと思いますよね。だから難しいことを選ばないといけないと思います。

■公開時、女性からの評判がよくて驚かれたと聞きました。
紀里谷:みんな泣いて出てくるんですよ。響いてるんだなと。想像していた以上に感じてくれるんだなと思いました。

■男性のファンの言葉でうれしかったことは?
紀里谷:性男性に限らず、たぶん普段その人がどのように生きているかが影響する映画だと思います。まじめに生きている人たちから、すごく評判が高かったと感じます。斜めに物事を見てしまう人には響かないのかな、とリアクションを見ていて思いました。

■まっすぐに忠義を描いているからでしょうか。
紀里谷:それもあると思います。情報で物事を見る人たちと感覚で見る人たちがいて、情報で見る人たちは、これはアクション映画だから、これは紀里谷だから、これは誰が出てるからといったことを考えるんですよね。良いも悪いも。アクションはこうあるべきだとか。いわゆる映画通と言われている人たちの見方といいますか。そういう見方もあれば、純粋に物事を見てくれる人たちもいる。今回はそういう純真な人たちに多く響いた気がします。

■今回、字幕制作にもタッチされています。珍しいことですが、自然にタッチすべきだと思われたのでしょうか。
紀里谷:お任せでもいいんですが、僕は日本語を理解できるので。これがフランス語やイタリア語だったらタッチしませんが、字幕を監修できて、きちんと言いたいことが伝えられたと思います。あと(字幕を担当した)戸田奈津子さんと仕事をしたかったというのもあります。どういう風に仕事をされるのか興味がありました。

■最後にDVD リリースに向けて一言お願いします。
紀里谷:僕は劇場でもDVD でもどっちでもいいという考えなんです。もちろん、願わくば劇場で観て頂きたいと思いますが、「映画は劇場で観るものだ」というこだわりはないです。僕自身、以前観たもので、あの映画良かったなと思ったとき、劇場、DVD、飛行機、どこで観たかを思い出せない。そういえば、飛行機で泣きながら観てたなとか。音も画質も良いのに超したことはないんだけど、でも観てくれるんだったら、スマートフォンでもいいです。
それでも伝わるようなものを作っていけばいいわけで、伝わるようにこちらが努力しないといけないと思います。
そのなかで何するのという話ですから。伝わればいいんです。

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執筆者

Yasuhiro Togawa