“切り裂きジャック”と並び称され、20 世紀イギリス犯罪史上もっとも有名な犯罪者と言われる双子のクレイ兄弟。60 年代のロンドンで暗躍した彼らの真実の姿をトム・ハーディが一人二役で体現、その演技力は各国で絶賛、大きな話題となった。

今回解禁する冒頭映像は、ギャングスターのイメージそのままの二人が高級車の後部座席で煙草の煙を燻らせるシーンから始まる。続くシーンでは兄のレジナルドがロンドン、イースト・エンドの自宅前で自身の張り込みに就いている刑事二人に紅茶を差し入れ、彼らを茶化すようなやり取りをした後、寝坊をしたお抱え運転手を徒歩で迎えにいく。道すがらすれ違う近所の主婦と気さくに挨拶を交わし、預かっていた忘れ物を手渡すその姿はロンドンの裏社会を手中に収めつつあったギャングらしからぬ描写だが、本作の撮影にあたり、クレイ兄弟について徹底的にリサーチしたという監督のブライアン・ヘルゲランドは次のように語っている。

「クレイ兄弟の人生はこの半世紀近くもの間、伝聞やタブロイド紙の記事の中でまことしやかに語られ続け、その真実がどこにあるのかもはや分からなくなってしまっていた。クレイ兄弟はロンドンという街の一部であり伝説的な存在だ。彼らはギャングにまつわるどこまでも暴力的な逸話の数々の中心にありながらにして、地元のお年寄りのためにドアを紳士的に開けて待っていてくれる現代版ロビン・フッドでもある。しかしその人生について語られるたびに、作り手の意図によって真実が歪曲され作り変えられてしまった。この作品で凶暴という一般的なイメージにとどまらず、この映画全体から今や“伝説”となってしまった彼らも人間だということを観客に感じとってもらいたいんだ。」 この作品を手掛ける中で、“他人の人生についてどれだけの人が真実を知っていると言えるのか?”という疑問に何度もぶつかることになったという制作陣が試行錯誤の末に描いたクレイ兄弟の物語。約 3 分間の冒頭映像に収められたレジナルドの恋人役を務めたエミリー・ブラウニングによる意味深なナレーションや、レジナルドの警察への挑発的な態度とイースト・エンドの人々への砕けた様子の対比は、本作を観る上での大きな手掛かりとなっている。

●冒頭映像 YouTube
https://youtu.be/YU-s0V9Oe94

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執筆者

Yasuhiro Togawa