押井守、監督デビューから30余年。彼が構想15年をかけて異国の地・カナダで全身全霊を捧げて撮影した『ガルム・ウォーズ』。言葉も通じぬ異国の地で、日本人は監督含めスタッフ7人。外国人俳優を起用して撮影に挑み、アニメーションと実写の境界線を越えた新しい映像を作り上げました。

本作で主人公のカラ役を演じたのは新人メラニー・サンピエールです。この役の候補は数名いて、モントリオールでのオーディションを経て彼女に決まりました。実は、書類選考のタイミングで最も可能性が低いとされていたのが彼女だったのです。彼女はオーディションに、黒髪のおかっぱでやってきました。押井監督のアニメが大好きで、半ばコスプレのように「素子(『攻殻機動隊』シリーズの主人公)」になりきってオーディションに臨んできたのです。もちろん、その小細工が功を奏したわけではなく、実際に目の前でポージングをしてもらい、カメラのレンズを通したときの被写体としての存在感が際立っていたので、最終的にカラ役をオファーすることになりました。キャリアから考えると大抜擢です!

 彼女が演じるどこか不安げで揺らぎのある女戦士・カラ。これまで圧倒的に強い女性像を好んで描いてきた押井監督の作品では異色のキャラクターであるといえます。が、もしカラが超人的に強いキャラクター像だったら成り立たなかったであろうシーンが、映画の終盤に散見されますので注目ください!!

関連作品

http://data.cinematopics.com/?p=53724

執筆者

Yasuhiro Togawa