ピンク四天王・佐藤寿保監督の最新作『眼球の夢』が7月よりシアター・イメージフォーラムにて公開されることが決定。それに伴い、なんと眼球が女陰を想起させる衝撃のメインビジュアルが解禁されました。
悪夢か、淫夢か、現実か!?ここまで倫理観を破壊する映画が、かつて存在しただろうか—。ピンク四天王と呼ばれ、長編デビュー作『狂った触覚(激愛!ロリータ密猟)』(85)から一貫してタガの外れた暴力とフェティシズム、鮮血と愛液の洪水をスクリーンに叩きつけてきた鬼才・佐藤寿保監督が、戦慄の日米合作映画『眼球の夢』を完成させた。

江戸川乱歩原作の『乱歩地獄/芋虫』(03)、谷崎潤一郎原作の『刺青 SI-SEI』(05)以来およそ10年ぶりにタッグを組むのはカルト脚本家・夢野史郎。少女と猟奇殺人鬼の血まみれの交流を描いた『秘蜜の花園(ロリータ・バイブ責め)』(87)、ピエル・パオロ・パゾリーニ監督へリスペクトを込めた『オスティア〜月蝕映画館〜(狂った舞踏会)』(89)、川端康成の「眠れる美女」をモチーフに劇薬ハルシオンを巡る秘密組織の恐怖を綴った『視線上のアリア(浮気妻 恥辱責め)』(92)など、これまでも尋常ならざる映像群を生み出し続けてきた日本のブニュエル×ダリとも言える二人。そんな犯罪ギリギリの二本のアンテナが長い沈黙を経て対峙した先には、予測不能な官能の極北があった…。

初期作品からライフワークとして追い続ける“視線の暴力”。その根源である“眼球”を主題に産み落とされた本作は、観客の精神をも危険にさらす、ドグラ・マグラ真っ青の発狂必至のビザール・シネマだ。

プロデューサーを務めたヴェレナ・パラヴェルとルーシァン・キャスティーヌ=テイラーは、人と自然の狂気を斬新な視点で撮影した海洋ドキュメント映画『リヴァイアサン』(12)の監督として知られる一方で、ハーバード大学の感覚民族誌学研究所所属の人類学者という顔を持っている。日本のピンク映画の歴史をリサーチする中で出合った、佐藤の一連の作品にショックを受け、バタイユが記した禁断の書「眼球譚」もかすむ本作の企画に賛同。プロデューサーとして名を連ねると同時に、研究テーマでもある人類の両義性および多様性に迫る彼ら自身の新たな作品撮影を本作の現場で同時進行的に行うという、共犯関係を結んだ(年内完成予定)。抉られる眼球、血を噴く眼窩など阿鼻叫喚の特殊造形を務めたのは『ライチ☆光クラブ』『20世紀少年』『告白』などを手掛けた百武朋。

精神崩壊をも辞さぬ体当たりの狂演でヒロイン・城所麻耶を体現したのは、ミュージカル界出身で映画初主演の万里紗。ボディラインを強調したセクシーなレザースーツを身に纏い、一眼レフカメラを片手に息を荒げながら眼球を激写する一方で、肉感的な裸体を惜しげもなく披露する。また麻耶のよき理解者であり、怪しい関係を匂わすゴス娘・紙谷リエを、佐藤寿保監督作『華魂 誕生』に主演した桜木梨奈が安定の存在感で務める。
さらに、麻耶に興味を持ち密着ドキュメンタリー映画を制作しようとする脳神経外科医・佐多邦夫を、映画・テレビ・舞台で名バイプレイヤーとして鳴らす中野剛が熱演。ロック界からは近年俳優としても注目され多数出演する頭脳警察のPANTAが参戦し、黒ずくめの眼球コレクターを怪演するほか、80年代にパリ人肉事件で“人類のタブー”に波紋を投げかけた佐川一政が、あの世とこの世の番人・センチネルとして独特の存在感を示す。

観客の眼球から脳髄へ、淫靡に接続されるパノラマ奇譚、地獄絵図の決定版!佐藤寿保の美学が炸裂した、絶対に見逃せない問題作がいよいよ公開だ。

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執筆者

Yasuhiro Togawa