現在公開中のパレスチナを舞台にした映画『オマールの壁』連動特別企画として、
写真家のハービー・山口氏による写真展「パレスチナへの恋 空遠く」が、
映画館・渋谷アップリンクに併設されているギャラリーにて行われる。

今回の展示は、ハービー氏が2013年にパレスチナをはじめて訪れた際の作品となる。
尚、この展示の作品を使った動画も公開されている、BGMはチャップリンが作曲し、
世界中の多くのアーティストにカバーされている名曲『SMILE』。
歌詞は「心が折れそうな時にこそ笑顔を浮かべるの、そうすればきっと明日には光が差してくるから」。

この曲を選曲した理由を、ハービー氏は、
「パレスチナの人々の落胆を想像しますとスマイルの詞が、ぴったりだと思いました」と語っています。

◆ハービー・山口写真展「パレスチナへの恋 空遠く」
2016年4月20日(水)〜5月1日(日)入場無料
会場:渋谷アップリンク ギャラリー(東京都渋谷区宇田川町37-18 トツネビル1階)
詳細はこちら http://www.uplink.co.jp/gallery/2016/43918

【動画】
ハービー・山口「パレスチナへの恋 空遠く」
https://youtu.be/K9lueIQPqto

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「パレスチナへの恋 空遠く」

1973年、23歳の時でした。
私はクウェートに行き産油国の撮影をしたことがあります。
当時日本では第一次石油危機の真っ最中で、
産油国の人たちはどんな暮らしをしているのだろうかという興味があったからです。
ある日クウェートの大学を訪れた時、キャンパスでとても美しい女子大生にポートレイトを撮らせて頂きました。
その彼女がパレスチナからの学生でした。
シャッターを切った時「私は祖国パレスチナへは戻れないの」と寂しげな表情を見せたのです。
パレスチナとは、、?
それ以来ずっと彼女の瞳が記憶に残っていました。

あれから40年後、2013年10月、
私は非営利団体「KnK 国境なき子どもたち」の要請で初めてパレスチナを訪れました。
分離壁という、イスラエルとパレスチナの間のみならず、
パレスチナの領土をも分断する壁が、高さ9メートル、800キロの長さで立ちはだかっていました。
ベルリンの壁の2倍以上の高さでした。

パレスチナの人たちは自由にこの壁を行き来することは出来ません。
閉じ込められているという表現が正しいでしょうか。
テロで何人もの命が失なわれても、どんどん領土が侵食されても、
私がカメラを向けたパレスチナの人々は、決して他人を恨む表情は浮かべませんでした。
とても黒く澄んだ透明な瞳が返ってきました。

人々は私に言いました。「私たちはテロリストではないの。
ただ私たちの子どもが、将来、恐怖を感じないで生きていって欲しいだけ!
政治がいけないんだと思う。いろんな国の人たちと私たちは皆んな兄弟同士でしょ!何故?」

あの時のクウェートの大学で見かけた彼女が無事祖国に戻っていたら、
もう60歳を過ぎていて、この国にいるかも知れません。
出会う人たちの中に彼女の面影を探していたのが正直な気持ちです。
でも会える筈もなく私は帰国しました。

パレスチナの人たちの瞳を世界の人々に見てもらう、それが写真家としての役割だと思います。

2016.4.16 ハービー・山口

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ハービー・山口 プロフィール
1950年、東京生まれ。中学2年生の時写真部に入る。高校、大学と写真部で過ごし、
片時もカメラを放さなかった。1973年、ロンドンに行き10年を過ごす。
ロンドンでは、劇団に入り役者として100回の舞台を踏む。
折からのパンクムーブメントを体験し、街の人々にカメラを向ける一方、
無名時代のボーイ・ジョージと同居するなどしながら、
ミュージシャンの写真を撮る様になる。
1980年代中頃に帰国し、日本のミュージシャンの写真を撮るかたわら、
若者から老人たちの素顔に迫ったポートレイトが高く評価されるようになった。
写真以外にも、エッセイ執筆、ラジオのパーソナリティーなどもこなし、
幅広い人気を集めている。個展、写真集多数。
http://www.herbie-yamaguchi.com/

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映画『オマールの壁』作品紹介
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一生囚われの身になるか、裏切者として生きるか
——1人の青年のぎりぎりの選択。

パレスチナの今を生き抜く若者たちの青春を鮮烈に描いた衝撃作。

分離壁で囲まれたパレスチナの今を生き抜く若者たちの日々を、切実に、
サスペンスフルに描いた本作は、カンヌ国際映画祭をはじめ、
多数の映画祭で絶賛され、2度目のアカデミー賞外国語映画賞ノミネート(パレスチナ代表)となった。
スタッフは全てパレスチナ人、撮影も全てパレスチナで行われ、
100%パレスチナの資本によって製作されている。

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◆ストーリー
思慮深く真面目なパン職人のオマールは、
監視塔からの銃弾を避けながら分離壁をよじのぼっては、
壁の向こう側に住む恋人ナディアのもとに通っていた。
長く占領状態が続くパレスチナでは、人権も自由もない。
オマールはこんな毎日を変えようと仲間と共に立ち上がったが、
イスラエル兵殺害容疑で捕えられてしまう。
イスラエルの秘密警察より拷問を受け、
一生囚われの身になるか仲間を裏切ってスパイになるかの選択を迫られるが…。

◆作品情報
映画『オマールの壁』
(2013年/パレスチナ/97分/アラビア語・ヘブライ語/カラー/原題:OMAR)
監督・脚本・製作:ハニ・アブ・アサド(『パラダイス・ナウ』)
出演:アダム・バクリ、ワリード・ズエイター、リーム・リューバニ ほか
配給・宣伝:アップリンク

角川シネマ新宿、渋谷アップリンクほか全国順次公開中

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★【公式サイト】http://www.uplink.co.jp/omar/
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執筆者

Yasuhiro Togawa