果たして彼は英雄か、それともただのペテン師か?

 本作は、社会問題にまで発展した自転車ロードレース選手ランス・アームストロングのドーピング・スキャンダルを扱い、スポーツ界を震撼させた疑惑の真相を浮き彫りにした問題作。選手として最盛期の20代にガンを発症し、脳までも冒されながら見事に復活、世界最大の自転車レース<ツール・ド・フランス>で7度の栄冠に輝いたアームストロングは、競技の外ではガン患者に献身的なサポートを惜しまないチャンピオンだった。しかし、その裏ではスピードのために手段を選ばない、常人には計り知れない勝利への執着があった…。

 サンデー・タイムズ紙記者であり「スポーツライター・オブ・ザ・イヤー」4度受賞を誇る、デイヴィッド・ウォルシュのノンフィクションを基に“疑惑のチャンピオン”の栄光と転落の軌跡を描く。スポーツ界の闇を暴くにとどまらず、勝利に執着するあまり、倫理を踏み外していった男の実像を多面的に描き、観る者の胸にずしりと響く作品が誕生した。
 監督は、アカデミー監督賞に「クィーン」でノミネートされたスティーヴン・フリアーズ。スポーツ業界におけるドーピング問題が頻繁に起きている昨今だが、実際にツール・ド・フランスを観戦した監督は「私はサイクリストの背後にある

あくなき勝利への執念を見た。彼らの後ろにいるのは全員、ツールの組織の人間だ。全体が巨大な“サーカス”であることを理解したよ。」と語っている。主演を務めたのは、「アームストロングの適役をキャスティング出来なければ、映画を作る意味がない」とまで語っていたフリアーズ監督に「彼こそ適役だ。」と言わしめたベン・フォスター。肉体改造のため厳しい自転車トレーニングを行い、ランス・アームストロングを見事に演じきった。

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執筆者

Yasuhiro Togawa