沖縄・久高島で12年に1度行われる祭祀「イザイホー」は78年を最後に、現在まで後継者不足の為に中止となっています。本作は2002年から、2014年の祭祀「イザイホー」の日を迎えるまで、神の島・久高島を撮り続けたドキュメンタリー映画です。

監督は岩波映画出身でドキュメンタリー映画監督の大重潤一郎監督。
大重監督は本作を完成させた直後の2015年7月22日に肝臓がんの為、亡くなりました。大重監督が最後まで撮り続け、島民たちの人生に織り込まれた儀礼と祭りを通して、終わることのない“祈り”を映し出した一大抒情詩『久高オデッセイ 第三部 風章』が4/16(土)より2週間、渋谷アップリンクにて公開となります。

【大重潤一郎 プロフィール】

1946年鹿児島県生まれ。岩波映画の助監督となり、ドキュメンタリーを学ぶ。1970年に岩波の仲間達と自主制作で劇映画「黒神」を完成、ホールを借り て全国で自主上映する。この上映の拠点のひとつであった神戸に転居し、地方自治体の反公害映画やテレビドキュメンタリーなどを制作。76年から東京で制作 会社経営に専念する。

90年代に神戸に戻るが、95年、阪神淡路大震災に遭遇、その惨状を身をもって体験する。そこで 得た経験から、自然に対する畏敬の念が益々深まり、映画作りへの意欲を燃やす。沖縄の自然をテーマとした「光りの島」を皮切りに、自然の中における人間の位置を、常に自然の側から問いかける作品を作り続けている。

2002年に沖縄映像文化研究所を設立、理事長に就任。2004年沖縄県より「美(ちゅ)ら島大使」の任命を受ける。2002年より、神の島と呼ばれる久高島(沖縄県知念村)を舞台にした映画「久高オデッセイ全3章」を制作中。2013年から第三部の制作にとりかかる。

2015年7月22日、肝臓がんのため那覇市の病院で死去。69歳。

大重潤一郎作品

1970年 「黒神」 自主作品
1986年 「水と風」 建設省(当時)
1991年 「水の心」 自主作品
1992年 「未来の子供たちへ」 日本ナショナルトラスト協会
     「水の光」 フジテレビジョン・関西テレビ放送
     「風の光」 フジテレビジョン・関西テレビ放送
1993年 「葵祭」 フジテレビジョン・関西テレビ放送
1994年 「祇園祭」 フジテレビジョン・関西テレビ放送
     「日本ナショナルトラスト」 日本ナショナルトラスト協会
1995年 「光りの島」 自主作品(上条恒彦出演)
1996年 「風の島」 自主作品(大嶺實清出演)
2000年 「縄文」 福井県三方町縄文博物館(梅原猛監修)
     「原郷ニライカナイへ」−比嘉康雄の魂− 自主作品(比嘉康雄出演)
2001年 「ビッグマウンテンへの道」 自主作品(山尾三省朗読)
     「小川プロ訪問記」(大島渚・小川紳介出演)
2003年 「沖縄ちゅらビデオ」(DVD版)シリーズ 沖縄物産企業連合
2006年 「久高オデッセイ 第一部 結章」 沖縄映像文化研究所
2009年 「久高オデッセイ 第二部 生章」 沖縄映像文化研究所
2015年 「久高オデッセイ 第三部 風章」 沖縄映像文化研究所

受賞歴
2003年 ベルリン国際映画祭正式招待

祭祀「イザイホー」は途絶えても、久高の祈りは続いていく
琉球開闢以来の神の島である久高島の“今”を撮り続けた大重潤一郎の集大成

昔から久高島では男は海人女は神人と定められて生きてきた。
そして月の満ち欠けにもとづいた旧暦の暦に沿って漁や祭祀が行われてきた。
琉球王朝時代以降「神の島」と呼ばれてきた久高島では12年に一度の午年神女の継承式であるイザイホーが行われてきた。
しかしイザイホーは1978年を最後に後継者不足のため途絶えた。
イザイホーは途絶えたけれど地下水脈は流れ続けている。
これは2002年から2014年までの12年間その地下水脈の流れを見続けてきた記録である。

関連作品

http://data.cinematopics.com/?p=54802

執筆者

Yasuhiro Togawa