人間の孤独と愛、しがらみからの解放をユーモアたっぷりに描き、2013年ロッテムダム国際映画祭ほか観客賞を多数受賞した『孤独のススメ』が2016年4月9日(土)より新宿シネマカリテほかにて公開となります。

2014年最も愛され、記憶に残った映画といえば『チョコレートドーナツ』だろう。日本では1館の封切からスタートしたが、口コミ効果が広がり、全国100館以上に拡大公開され、異例のロングラン大ヒットを記録した。本作は1970年代のカリフォルニアで、歌手を夢見るショーダンサーのルディと正義感に溢れる弁護士ポールのゲイカップル、母の愛情を受けずに育ったダウン症の少年マルコが、同性愛者に対する差別や偏見に立ち向かっていく姿を描いた感動作で、トライベッカ、シアトル、サンダンスほか全米各地の映画祭で観客賞を総なめにしたことでも話題を呼んだ。

「観客賞」は、有名批評家や業界関係者たちが与える権威ではなく、その名の通り、一般の観客たちに「これは私たちのための物語だ!」と感じさせる作品だけが手にする栄誉だ。さてそんな『チョコレートドーナツ』公開から約2年、オランダ映画の新星が創り上げた1つの作品に注目が集まっている。ロッテルダム国際映画祭、モスクワ国際映画祭で観客賞を受賞し、日本で開催されたSKIPシティ国際Dシネマ映画祭で最優秀作品賞を獲得、各国の観客を感動の渦に巻き込んだ作品−『孤独のススメ』だ。

人付き合いを避け、変化のない決まりきった毎日を過ごす“おひとりさま”のフレッドの元に、ある日当然現れた、闖入者テオ。髭はぼさぼさに伸び、ろくに言葉も発さず、過去も持たないこの男が、フレッドの家に転がり込んで一緒に暮らすようになったことから、日常がすこしずつ色付いていく。この野良猫のようなテオは世間の常識を知らず、幼い子供のように無邪気に振る舞い、動物を愛する純粋な心を持っている。この「天使」のような独特の存在感は、『チョコレートドーナツ』のダウン症の少年マルコに通じ、彼らの存在を前に、私たちは自分の価値判断や良心をふと考えさせられていく。

さらに、フレッドとテオの「性別を越えた愛情」は、彼らの住む小さなコミュニティからは好奇の目にさらされ、厳格な宗教的教義において敵視の対象となっていく。
『チョコレートドーナツ』でも扱われている「セクシャルマイノリティ」の問題も含みつつ、「自分らしく生きるとはどういうことか?」を普遍的で味わい深く描き、最後には温かな人間賛歌に涙が溢れるだろう。

映画『孤独のススメ』は4月9日より、新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー。

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執筆者

Yasuhiro Togawa