本作は、アウシュヴィッツで命を奪われたユダヤ人女性作家イレーヌ・ネミロフスキーが、娘に託したトランクに60年以上眠っていた未完の小説「フランス組曲」を原作に、第二次大戦中ドイツ占領下フランスの田舎町で、ピアノの音色が結びつけたフランス人女性とドイツ将校との恋を中心に、過酷な状況下で懸命に生きる人々の姿を描いた愛の物語。
第二次大戦下、原作者が命の危険を感じながら必死に書き綴った実際の原稿が映し出されスタートする特別映像。

「この本は単なる小説ではありません。作家の命を奪っても作品は生き残りました」と語り出したソウル・ディブ監督は当時の出来事をリアルタイムに目撃し、体験した女性作家の独自な視点で書かれた原作について「事実に即してリアルタイムに書かれた原作が 60 年間 埋もれていたタイムカプセルに思えました。」と語り、「原作の中で忘れられない場面の1つが、避難する人々が空襲に遭うシーンです。原作全体から見ればほんの一部かもしれませんが市民の目で見た戦争の物語を表現したかったのです」原作の象徴的なシーンについて、それを忠実に再現した本編映像とともに語った。また、本作で貧しいながらも夫(サム・ライリー)を献身的に支える妻を演じたルース・ウィルソンも、「本作は善人と悪人を明確に分けていません。非道なことをする人はフランス人の中にも地域の中にもいますドイツ人だけを悪者扱いせずフランス人の嫌な面も描いている点に引かれました」“ナチス”、“ユダヤ”という言葉を一度も使用せず、敵味方を超え一人の人間として占領下を生きる個の姿を描いた原作の魅力を語った。さらに今回の特別映像には原作者の孫も登場「占領下の時期が特につらかったと祖母は言っていました。敵が急に身近な存在になったからでしょう。ドイツ兵の名を知り言葉を交わし共に生活をするのです。敵がどんな人間かも知らずに撃ち合うのとはわけが違います」ドイツに降伏したフランスで、まさに本作で描かれる人々同様の苦痛を原作者自身が抱えていたことを語った。ヒーローではなく、当時を生きた原作者にしか描けなかった“普通の人々”の目線で綴られた物語「フランス組曲」。作者が完結させることの叶わなかった未完の遺稿は、まるで 1940 年の当時の人々の姿をのぞき見するかのような細かな演出と、ミシェル・ウィリアムズ、マティアス・スーナールツ、クリスティン・スコット・トーマス、サム・ライリー、マーゴット・ロビー、トム・シリングら豪華俳優陣の抑えた演技と力強い存在感により、見応えある映画として現代に甦った。

その他、今回の特別映像には主人公の厳格な義母を演じたクリスティン・スコット・トーマスらのインタビューに加え、占領下を生きる人々を描いた原作にも通じる象徴的な本編シーンがふんだんに盛り込まれている。話題の最新作『フランス組曲』は 2016 年1月 8 日より全国公開。

特別映像
https://www.youtube.com/watch?v=eHxhQOzZz-Q

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執筆者

Yasuhiro Togawa