箭内道彦——彼の作品を見たことがない人はいない、と言っても過言ではないだろう。あらゆるモノの核を切り取り、その魅力を最大限に表現する稀代のクリエイティブディレクターだ。
 そんな彼が今年、遂に映画監督デビューを果たした。それだけでも大ニュースなのだが、選んだ題材が今年20周年を迎えたBRAHMANということで、話題に拍車がかかった。
 改めて説明するまでもないが、BRAHMANは『静と動』を基盤に、人間の限りなく深い思いと怒り、そして悲しみを音に昇華させる4人組。その圧倒的パフォーマンスには一分の隙もなく、神がかっているとすら言える。そんなバンドのメンバー4人がカメラを通して箭内に見せた「人間」としての素顔、そして、箭内が我々に提示する「ブラフマン」像に大きな注目が集まった。
 公開前から大きな話題となったこのドキュメンタリー映画は7月4日から全国各地で上映され、当初の予定にはなかった劇場からも「是非上映させて欲しい!」という熱いリクエストが多数寄せられた。結果として、全国30館で上映された今作は、関係者も驚きの2万人という動員を記録。これは映画を観た人の感動や興奮が口コミでジワジワと広がったためだろう。
 ここまで大きな反響を呼んだのは、BRAHMANの4人が箭内にだけ語った真実や彼だけに見せた日常の姿が、想像以上に等身大でリアルに迫ってきたということが理由のひとつ。さらに、4人の話を受けて箭内が向かった先々に、これまで公に語られることのなかった真実が眠っていたことも大きな驚きを与えた。そして、エンディングでBRAHMANというバンドの歴史やそれに関わってきた人々の想いが“とある形”に集約されたとき、大きな感動が波のように押し寄せてくるのだ。
 BRAHMANとは、バンドとは、そして人生とは——答えは全てこのノン・フィクションムービーの中にある。
 映画『ブラフマン』の大ヒットを受け、12月16日(水)にDVD発売が決定した。その特典映像として、BRAHMANのフロントマンTOSHI-LOWによるアンサームービー、映画『ヤナイミチヒコ』が同封されることが決定した。もちろんTOSHI-LOWが監督をするのは初めて、またこれが最後の監督作になるという。その作品の全貌は明らかにされてないが、映画『ブラフマン』と同様に刺激的なノン・フィクションになる予定だ。
 また、11月14日(土)、15日(日)に幕張メッセ国際展示場にて実施される「尽未来際〜尽未来祭〜」の予習とも言うべきタイミングの10月28日(水)よりiTunes Store、Google Playにて先行配信、その後11月4日(水)以降順次J:COMオンデマンド、U-NEXTほかでの配信が決定した。映画館でもイオンシネマ天童(10月16日(金)まで)、長野グランドシネマズで上映中の他、17日(土)からはイオンシネマ岡山、31日(土)からはフォーラム盛岡での上映が決定している。是非、映画『ブラフマン』を見て、「尽未来際〜尽未来祭〜」に臨んでいただきたい。BRAHMAN20周年の祭りはまだまだ終わりそうもない。

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執筆者

Yasuhiro Togawa