この度、本年度カンヌ国際映画祭パルムドール〈最高賞〉受賞作、ジャック・オディアール監督作『ディーパン(原題)』の邦題が、『ディーパンの闘い』に決定し、2016年2月、TOHOシネマズ シャンテほかにて全国公開することとなりました

セザール賞新人監督賞を受賞した『天使が隣で眠る夜』(94)でデビューを飾り、『リード・マイ・リップス』(01)、『真夜中のピアニスト』(05)、『君と歩く世界』(12)など、発表するごとにセザール賞を多部門に渡って独占してきたフランスの鬼才ジャック・オディアール。また『預言者』(09)では、カンヌ国際映画祭審査員特別賞グランプリをはじめ、数々の映画賞を総なめにしたのも記憶に新しいところ。そんな鬼才の最新作『ディーパンの闘い』は、内戦下のスリランカを逃れ、フランスに入国するため、偽装家族となる元兵士ディーパンと女と少女の物語。暴力から逃れてきた3人は、パリ郊外の集合団地に腰を落ち着け、ささやかな幸せに手を伸ばした矢先、新たな暴力に見舞われます。
人種・宗教・移民問題に揺れる欧州の今を背景にしながら、暴力、戦いを捨て、愛を、新しい家族の絆を掴もうとする個の闘いを圧倒的且つ、スタイリッシュに描いた人間ドラマの傑作は、今年のカンヌ国際映画祭でコーエン兄弟、グザヴィエ・ドランら気鋭審査員の満場一致のもと、『キャロル』(15)など話題作を押さえて、最高賞のパルムドールに輝きました。

主人公ディーパンを演じたのは、スリランカ内戦の元兵士であり、亡命後、作家として活躍するアントニーターサン・ジェスターサン。これまでも、ことごとく主演俳優からひと皮むけた演技を引き出してきたオディアールは、演技経験のないジェスターサンの荒削りの魅力を巧みに操り、悩めるディーパンの魂をスクリーンに浮かび上がらせてみせます。光と闇が踊る映像美にクールなサウンドを注ぎ込むのは、今回、初めて映画音楽を手がけたエレクトリック・ミュージックの気鋭、ニコラス・ジャー。

サスペンスフルなフィルム・ノワールの手法を得意としつつ、ジャンルを軽々と超えてゆくジャック・オディアール。カンヌが、そして世界が喝采を送った、鬼才の進化を見届けてください。

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執筆者

Yasuhiro Togawa