パリ旧市街を舞台に、家族の秘密と真実の絆を描くヒューマンドラマ『パリ3区の遺産相続人』が11月14日(土)よりBunkamuraル・シネマ他にて公開される。『いちご白書』『さらば青春の日』など数々の傑作映画の脚本をつとめてきたイスラエル・ホロヴィッツは本作が長編映画監督デビューとなる本作。偉大なる脚本家にして新人映画監督の元には、ケヴィン・クライン×マギー・スミス×クリスティン・スコット・トーマスの豪華アカデミー賞俳優たちが集結した。

最初に出演を決めたのは、パリのアパルトマンに住む老婦人マティルド役のマギー・スミス。シェイクスピア作品など数多くの舞台で活躍する一方で、『ミス・ブロディの青春』『カリフォルニア・スイート』で2度のアカデミー賞を受賞し、類稀なる存在感が光る大ベテラン女優だ。ハリー・ポッターシリーズの「マクゴナガル先生」を思い描きながら本作を観ると、「マギー・スミスってこんなにおばあちゃんだったの!?」とさぞ驚くはずだ。それも無理はない、彼女は90歳の老婦人役を最低限のメイクと完ぺきな演技で見事演じきったからだ。

主人公のマティアスを演じたケヴィン・クラインは『ワンダとダイヤと優しい奴ら』でアカデミー賞助演男優賞を受賞し、舞台でもトニー賞を2回受賞するなど輝かしい経歴の持ち主。ホロヴィッツとは長年の友人関係にあり、キャラクター作りにもアイディアを提供していた。ホロヴィッツはクラインについて「彼は俳優として素晴らしい本能を持っていて、どれも真実味に溢れている。だから編集にあたって、この悲喜劇に必要な演技を全部手に入れていた。」と称賛している。クラインが舞台で培ってきたコミカルな演技、シリアスな演技、音楽の才能、そのすべてが存分に役柄へと反映されている。

脚本に魅了され、出演を快諾したというマティルダの娘・クロエ役のクリスティン・スコット・トーマスは、アカデミー賞主演女優賞にノミネートされた『イングリッシュ・ペイシェント』をはじめ、『ミッション:インポッシブル』や『サラの鍵』など話題作に次々と出演した実力派美人女優。その美貌にも関わらず「モテない女性」を演技力で表現したクリスティンに対し、ホロヴィッツは「クリスティンには驚かされる。彼女はクロエの神経症的な怒りを見事に表現してくれたんだ!」と絶賛を惜しまない。

ホロヴィッツは「みんな舞台経験が長く、全員が仕事中毒だ。セットではコミュニケーションもスムーズだった。私は“偉大な俳優をキャスティングして、彼らの邪魔をしないことだ”というシドニー・ルメット監督の名言に従ったまでだよ。」と3人と一緒に仕事をした喜びを明かしている。戯曲家として数多くの舞台作品に関わってきたホロヴィッツだからこそ叶えられた豪華キャスティングであり、絶妙に息の合った芝居を見せる3人の名優でなければこれほどの極上ドラマにはなりえなかったことだろう。

映画『パリ3区の遺産相続人』は11月14日(土)よりBunkamuraル・シネマほかロードショー。

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執筆者

Yasuhiro Togawa