12月19日岩波ホールにて公開される『ヴィオレット-ある作家の肖像-』の日本版予告編が完成しました。

個性派の名女優エマニュエル・ドゥヴォス主演、時代を変えた実在の女性作家の知られざる半生を描く
映画『ヴィオレット-ある作家の肖像-』。
予告編に流れるのは、歴史的な大女優ジャンヌ・モローが歌うシャンソン!!
 
映画の主人公は実在した女性作家、名前はヴィオレット・ルデュック。日本では、代表作「私生児」と「ボーヴォワールの女友達」の2冊が出版されただけなので知る人は少なく、本国フランスでも一時期は忘れられた作家だったというが、フランスでは、この映画の公開を機に全集も出版。今では、シモーヌ・ド・ボーヴォワールが「第二の性」で時代を変えたと同じように、時代を変えた作家として再評価され、その劇的な生涯から“文学界のゴッホ”とまで言われている作家だ。そのヴィオレットの半生を描いたのが、『ヴィオレット-ある作家の肖像-』。

この度完成した日本版予告編は、「母は私の手を絶対に握らなかった」という一文をヴィオレットが万年筆でノートに書き記すシーンから始まる。これが、彼女の処女作「窒息」の冒頭の一節。つまり、このシーンこそが、“作家の誕生の瞬間”。ヴィオレットは、この処女作をボーヴォワールに認められて作家デビュー。ジャン・ジュネ、ジャン・コクトーら当時の錚々たる作家にも絶賛されるが、女性として初めて自身の生と性を赤裸々に書いたために、社会からは受け入れられず、精神に異常さえきたしてしまう。しかし、ボーヴォワールの励ましによって集大成となる小説に取りかかる…という物語。

日本でも人気の高いアルノー・デプレシャン監督のミューズとしても知られる名女優エマニュエル・ドゥヴォス演じるヴィオレットと、その母との確執、美貌と実力を兼ね備えた女優サンドリーヌ・キベルラン演じるボーヴォワールとの複雑な関係が描かれ、最後にはヴィオレットの傷ついた魂を優しく包み込むようなプロヴァンスの風景が広がる。

そして、この予告編で、レオス・カラックスやブリュノ・デュモン作品で知られる名カメラマン、イヴ・カープの映像や、『アメリ』や『イヴ・サンローラン』の名デザイナー、マドリーヌ・フォンテーヌの衣裳とともに印象的なのが、最後に使われているシャンソン。実はこの歌、あの映画史に残る伝説の女優ジャンヌ・モローが歌っているのだ。曲は、歌う女優でもあるジャンヌ・モローが60年代に発表したアルバム「クラリスの歌/Les Chansons de Clarisse」に収録されている「Aimer/愛するということ」。若き日のモローの歌声が何とも軽やかだ。

「書くことが、生きること」というキャッチフレーズ通りに愛も涙も叫びもすべてを書いた女性作家の映画を、人生の愛も涙も演技の肥やしにしたジャンヌ・モローの歌声が彩る、この贅沢。『セラフィーヌの庭』で、同じように女性芸術家を描いてセザール賞7冠に輝いた名匠マルタン・プロヴォと名女優ドゥヴォスのコラボレーションから生まれた『ヴィオレット−ある作家の肖像−』。
12月の公開までぜひ予告編でその一端を味わってほしい。

予告編::https://www.youtube.com/watch?v=G8t2fl-IW7Y

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執筆者

Yasuhiro Togawa