9月26日よりシネマート新宿にて34年ぶりのリバイバルレイトショーとなる、オーストラリア暴走族映画の金字塔『マッドストーン』(1974年作)が、世界初で、日本で緊急制作されたHDマスターでの上映と、10月14日に控えるブルーレイ&DVD発売となることが決定いたしました。

『マッドストーン』は、メル・ギブソン主演の大ヒット作『マッドマックス』の原型であるオーストラリア映画で、本作が無かったら『マッドマックス』は生まれていないともいえる、オーストラリア映画の重要作。34年前に上映されたきりで、さらには、80年代のテレビ放送と、VHS化されて以降、日本では一度もDVD化、ブルーレイ化されず、まったく注目されずに埋もれてきた映画です。今回、上映と発売にあたり、その素材が、監督からクエンティン・タランティーノを経て日本に緊急転送されてきた35mmプリントをもと、急遽日本でテレシネ作業を行った世界初のHDマスターとなり、さらには、99分のディレクターズカット版であることが判明しました。

もともと、タランティーノは、『マッドストーン』をこよなく愛し、「史上最高のバイカー映画」と公言。2008年にオーストラリアの新聞に個人的なコレクション用に「『マッドストーン』のプリント求む」と掲載、それを見た監督のサンディ・ハーバットは2009年に35mmプリントをタランティーノにプレゼント。それはオーストラリア中をまわり、80箇所以上の劇場で上映されてきた70年代当時の使い古されたプリントでした。そして、今年、タランティーノはロサンゼルスで上映するべく状態の良好なプリントのリクエストを改めて打診、監督は現存する最良のプリントを送りました。それが、今年8月26日のタランティーノによる上映を経て、日本にやってきた、今回の上映とソフトに使われる大元の素材となります。

監督のサンディ・ハーバットは、映画会社から『マッドストーン』のすべての権利と素材を買い取っており、本作のすべてをコントロール。今回のプリントは80年代に焼かれた15本のプリントの中での最後の最良のプリントで、監督が作品を残す上でほぼ外に出すことのなかった最も重要なプリントとなります。もともと初公開時(1974年)の段階から「もっと短く編集したかった」と話していた監督は、オリジナルカットの約103分、80年代に数回上映されたことのある128分バージョンとは異なる、自身が最も納得のいくカットを作りだしました。それが、最終保存版であるタランティーノ経由で来たプリントであり、今回上映&発売される99分のディレクターズ・カットとなります。直近の本人への再確認でもこの99分バージョンが監督によるファイナルカット版だと語っています。

デジタル技術の発達した現在、映画業界では最新の技術で古い作品であっても驚異的な高画質を実現している作品が多いですが、この『マッドストーン』は全く異なり、80年代に焼かれた上映用35mmプリントを素材としています。高画質を求めるHDデジタルマスターの常識では考えられないことですが、『マッドストーン』は劇中の“墓掘り軍団”同様、映画界の流れとは異なる独自の掟に則って存在しており、このプリントは監督が作品の最終保存版として保管していた最重要プリントであり、それを監督本人がタランティーノおよびこの日本に送ってきたということが重要で、日本で作られた今回のHDマスターは「普通でない」サンディ・ハーバットの魂が宿ったマスターであるといえます。そのキャリアで唯一の監督作であり、映画業界からかけ離れたところに存在する異端、サンディ・ハーバットのオーストラリア映画の金字塔である『マッドストーン』の日本久々の再上陸は、高画質ではありませんが、“ホンモノ”の素材をもとにしたマスターでのものといえます。

9/26(土)〜10/2(金)シネマート新宿、シネマート心斎橋にて1週間限定レイトショー!
※10/14(水)Blu-ray・DVD発売&レンタル同時リリース

関連作品

http://data.cinematopics.com/?p=54116

執筆者

Yasuhiro Togawa