アジア初の国際ドキュメンタリー映画祭として、山形市の市政 100 年記念で 1989 年からスタートし、隔年で開催されてきた本映画祭も 今年で14回目を迎えることになりました。

毎年、世界各地の作品が上映されてきていますが、今年は、ブラジルと日本の外交樹立 120 周年となり、インターナショナル・コンペティション、特別上映、ラテンアメリカ特集などでも、ブラジル映画が上映されます。

インターナショナル・コンペティションでは、今回で 3 回目の参加となる、ブラジルのマリア・アウグスタ・ラモス監督『6 月の取引』、これまで本映画祭の受賞歴のある、パトリシオ・グスマン監督の『真珠のボタン』やヘルマン・クラル監督の『ラスト・タンゴ』、続々と作品が劇場公開されているペドロ・コスタ監督『ホース・マネー』などがラインナップに入っています。
アジア千波万波では、タル・ベーラ監督の映画プログラムで学んでいる若手監督、小田香やガージ・アルクッツィ監督の作品も入っています。その他、どの特集も見応えあるプログラムとなっておりますので、各特集プログラムの見どころをご紹介させて頂きます。

<ラテンアメリカ — 人々とその時間:記憶、情熱、労働と人生> (10/9〜14 会場:山形市民会館小ホール)
1960 年代に「第三の映画/サード・シネマ」と銘打たれた新しい映画の形式が模索され、数々の伝説的な作家を輩出したラテンアメリカ。やがて、独裁政権時代へと突入し、自国での制作が困難になった作家は、国境を越えて様々なかたちで助けを得て、互いに精神的にも連帯しながら作品を完成させていく。「第三の映画/サード・シネマ」は、第三世界(アジア、アフリカ、ラテンアメリカ)から発せられた情熱をかけた映画の探究でもある。混迷を極める現在だからこそ、60〜70 年代の社会変革への挑戦を映画で試みた第三世界の〈抵抗〉という視座を映し出し、現代における試みも含めて上映し、国境や島境を越えてラテンアメリカを巡るプログラム。

【ここが見どころ!】
ラテンアメリカでは、政治的な変動が常に人々の生活に影響を与え、当然ながらそこに暮らす映画人たちの表現にもその余波が及び拡散していった。そんな時代から誕生した映画からいま、ラテンアメリカで制作されている作品までほぼ全作品が日本初上映!パトリシオ・グスマン『チリの闘い-武器なき民の闘争 三部作』、オクタビオ・ヘティノ、フェルナンド・ソラナス『燃えたぎる時』から“カリウッド”と称されるコロンビアのカルロス・マロヨやルイス・オスピナ、アルゼンチンのフェルナンド・ビリが初代校長を務めたキューバの映画学校(EICTV)の若き映画人の作品まで 31 作品を上映。

『チリの闘い‐武器なき民の闘争 三部作』パトリシオ・グスマン/チリ、キューバ、フランス/1975−78/263 分
『チルカレス』マルタ・ロドリゲス、ホルヘ・シルバ/コロンビア/1972 /43 分
『燃えたぎる時』オクタビオ・ヘティノ、フェルナンド・ソラナス/アルゼンチン/1968/260 分
『聞いてよ、見てよ』カルロス・マヨロ、ルイス・オスピナ/コロンビア/1972/27 分
『新しき人』アルド・ガライ/ウルグアイ、チリ/2015/79 分
『プロパガンダ』クリストファー・ムライ/チリ/2014/61 分
『ローシャの飛礫(つぶて)』エリック・ローシャ/ブラジル/2002/94 分
『ティレ・ディエ』フェルナンド・ビリ/アルゼンチン/1960/33 分
『地名学』ジョナサン・パレル/アルゼンチン/2015/82 分
『貧しさを吸いとる者たち』カルロス・マヨロ、ルイス・オスピナ/コロンビア/1978/28 分
『大地、記憶と未来への私たちの声』マルタ・ロドリゲス、ホルヘ・シルバ/コロンビア/1973−81/100 分
『生意気でだらしのない奴ら』カルロス・フローレス・デルピノ/チリ/1973/63 分
『感性』ヘルマン・シェールソ / アルゼンチン / 2012 / 60 分
『叫び』レオバルド・ロペス・アレチェ / メキシコ / 1968 / 101 分
『侵攻』アブネル・ベナイム / パナマ、アルゼンチン / 2014 / 94 分
『樹』グスタボ・フォンタン / アルゼンチン / 2006 / 62 分
『孤独な少年のクロニクル』レオナルド・ファビオ / アルゼンチン / 1965 / 79 分
『マリア・サビーナ 女の霊』ニコラス・エチェバリア / メキシコ / 1979 / 80 分
『メキシコ:凍結した革命』ライムンド・グレイサー / アルゼンチン / 1973 / 65 分
『サンティアゴ』ジョアン・モレイラ・サレス / ブラジル / 2007 / 80 分
『主人—コパカバーナのある建物』エドゥアルド・コウチーニョ / ブラジル / 2002 / 110 分
1960—70 年代チリ短編映画集
『ヴァルパライソにて』ヨリス・イヴェンス / チリ、フランス / 1963 / 27 分
『スーツケース』ラウル・ルイス / チリ / 1963 / 20 分
『誰のものでもない地』ミゲル・リティン / チリ / 1965 / 6 分
『栄養失調の子どもたち』アルバロ・ラミレス / チリ / 1969 / 11 分
『勝利をわれらに』ペドロ・チャスケル、エクトル・リオス / チリ / 1970 / 15 分
『チリからの伝言』ホセ・ロマン、ディエゴ・ボナチナ / チリ / 1978 / 15 分
EICTV 短編映画集
『木』 ローヤ・エシュラギ / キューバ、イラン / 2014 / 14 分
『大きな館(仮)』ジュリエット・トゥアン / フランス / 2013 / 24 分
『ABCs』ディアナ・モンテロ / キューバ / 2014 / 16 分

★上映後監督・ゲストによるトークあり★
カルロス・フローレス・デルピノ(『生意気でだらしのない奴ら』監督)
マルタ・ロドリゲス(『チルカレス』『『大地、記憶と未来への私たちの声』監督)
ルイス・オスピナ(『聞いてよ、見てよ』『貧しさを吸いとる者たち』監督)
パブロ・マソーラ(映画研究者)
コンスエーロ・リンス(エドゥアルド・コウチーニョ研究家)

★ラテンアメリカ特集関連企画 アルゼンチン・ブエノスアイレスの次世代★
10月12日 トミ・レブレロ 山形特別ライブ
現地インディ・シーンを代表するシンガー・ソングライター/バンド ネオン奏者 トミ・レブレロの、東北で一夜限りのライブを開催!

執筆者

Yasuhiro Togawa