1970 年、ベトナム反戦運動の激化を背景に、大統領は治安維持法を発令、米政府は反政府分子を根こそぎ拘束。
一方的な裁判にかけられた彼らは、求刑通り懲役を全うするか、カリフォルニア州「ベアーマウンテン国立懲罰公園」で人間狩りの標的として 3 日間を生き延びるか、二者択一を迫られる—。
暴走する権力の恐怖を描いた偽ドキュメンタリーの問題作『懲罰大陸★USA』(1971)を監督した英国人ピーター・ワトキンスは、1960 年代にイギリス BBC で編集アシスタント兼ドキュメンタリー監督としてキャリアをスタート。1965 年に発表した監督作『The War Game』(日本未公開)は、イギリスにソ連の核ミサイルが落とされたという設定をドキュメンタリー・タッチで描いた【劇映画】だったにもかかわらずアカデミー賞・長篇ドキュメンタリー賞を受賞してしまった。
いよいよ今週末(8/29)より新宿シネマカリテにて公開となる本作に硬派コメントが続々寄せられています!

●リアルな虚構が浮かび上がらせる戦争をしたい国の醜悪なる恐怖。強烈過ぎるメッセージが今なお鋭利な反戦&反権力映画の金字塔。この単刀直入な過激さは、今の日本に、絶対に刺さるハズだ!
— 江戸木純(映画評論家)

●『ザ・ウォー・ゲーム』(1965/日本未公開)でなんとアカデミー最優秀ドキュメンタリー賞を受賞してしまった「偽」ドキュメンタリーの鬼才ピーター・ワトキンス。『懲罰大陸USA』は、『バトル・ロワイヤル』や『ハンガー・ゲーム』に 20 年以上先駆け、M.I.A.のビデオ「ボーン・フリー」にも大きな影響を与えた地獄のサバイバル合宿だ。
— 町山智浩(映画評論家)

●こっ、これは……“若松プロ★USA”? もしくは政治の季節のサバイバル系 YA〈ヤングアダルト〉? ニューシネマの裏で生まれていたインディペンデントの奇形児は、YouTube 慣れした我々にも衝撃をもたらす閲覧注意動画だ。この傑作を未見のまま映画(史)を語っていたなんて、恥ずかしすぎる!
— 森直人(映画評論家)

●いざ戦争が始まると、人を殺したくないからと徴兵を拒む若者に対して国家はどう対応するのか。なぜかフィクション
と捉えきれない真のホラー。今のこの国でこそこれを見て、大いに今後のことを話し合いたい。
— ピーター・バラカン(ブロードキャスター)

●スチューデント・パワー華やかなりし 1971 年に開園した砂と灼熱の太陽しかない麗しのテーマパーク「懲罰公園」でどこまでも歩き続ける熱射病地獄、それはあなたにも待っている運命かも知れない!
— 柳下毅一郎 (映画評論家)

●露骨なまでの反権力性。そしてそれを本気でつぶしにくる、体制側の圧力の対比。しかし現代日本は、まさにここへ立ち返ってしまった……! 本作のモキュメンタリーとしての手法はいまだ最先端だ。特に批判対象として描いたはずの、「戦争賛成!若者にはしつけが必要だ!」と口にする体制側のモンスターぶりが、各人とも個性豊かすぎて思わず見入ってしまう。砂漠映画にハズレなし!
— 真魚八重子(映画評論家)

●反体制を許さない権力を描くのならばドキュメンタリーでも撮ることは出来た。しかし現実の一歩先を想像させることで、時代性を超えた普遍的な物語へと進化した。本作にはフェイクドキュメンタリーとして作るべき必然性がある。
— 松江哲明(ドキュメンタリー監督)

(敬称略・コメント到着順)

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執筆者

Yasuhiro Togawa