メロドラマの原点とも言うべき、フランスの文豪エミール・ゾラの名作「テレーズ・ラカン」を、舞台を現代日本に置き換えて映画化した『アレノ』が11月下旬に新宿K’s cinema他にて全国公開する運びとなりました。このほど、本作の特報が完成いたしました。

映画の監督を務めたのは、これまでプロデューサーとして『かぞくのくに』『夏の終り』『楽隊のうさぎ』を作り出し、本作が監督デビュー作となる越川道夫。共同脚本の佐藤有記(『ヘヴンズストーリー』)をはじめとする気鋭のスタッフが、16mmフィルムで撮影された、ざらついた映像に女と男たちのすれ違う思いと、官能の姿を描き出した。

病弱な夫と味気ない結婚生活を送っていた“妻”は、2人の幼馴染でもある“男”と不倫関係にあった。“妻”は“男”と逢瀬を重ねるうちに、たちまち、結婚生活で味わうことのできなかった悦びを秘かに享受し、盲目なまでに恋と情欲の虜となっていった。ある日、“妻”は“男”と結託し、3人で船遊びに行き、夫を湖へ突き落して、船が偶然覆った様子を装い溺死させようと企てる。しかし、湖に突き落とそうとした時、3人はボートもろとも転覆してしまう。やっとのことで岸にたどり着いた2人だったが、そこに夫の姿はなかった。夫は溺れて死んだのか?2人は湖畔のラブホテルに宿をとり、夫の溺死体があがるのを待つことにするのだが・・・。

主人公の“妻”を演じるのは、NHK連続テレビ小説「花子とアン」の宇田川先生役が記憶に新しい山田真歩。本作では結婚生活に対する強いやりきれなさと、燃え上がる強い情欲の炎を胸の内にたぎらせている「女」の心情を苛烈に演じ、自身のキャリアの中でも初めてとなる激しい濡れ場にも挑戦。強い気概を持って本作に挑んでいる。“男”を演じるのは、数々の監督に愛される個性派・渋川清彦。“夫”を蜷川幸雄演出『ハムレット』(2012)のハムレット役に抜擢された川口覚が演じる。

批評家の佐々木敦氏は、映画についてSNS上で「物語、シナリオ、演技、画面、編集、あらゆる要素が緊密で、かつ独特の揺らぎを有している。冒頭の、湖畔に佇む男女をゆっくりとした横移動で捉えた引きのショットからしてただならぬ空気を孕んでいる。かといって息詰まるような雰囲気ではなく、どこか全てが絵空事、他人事のような感覚も宿っている。とにかくヒロインの山田真歩が素晴らしい。全裸の絡みありという挑戦的な役柄を、静かな、だが圧倒的な存在感で演じている。80分足らずという尺といい、ストーリーのあり方といい、これは越川さんによるロマンポルノへのオマージュなのかなと思った。それも往年の名作群というよりも、僕らがリアルタイムで観ていた80年代以降の日活ロマンポルノの或る系譜。相米慎二の『ラブホテル』もその一本に位置付られるような。」と評している。

映画制作だけにとどまらず、配給、宣伝と長年日本映画界を支えてきた越川道夫の渾身の一作は、11月下旬に公開する

特報::http://youtu.be/2hnNRzcGaa4

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執筆者

Yasuhiro Togawa