年3月に遺作『神々のたそがれ』が劇場公開された、ロシアの巨匠、アレクセイ・ゲルマンの全作品を上映する特集上映「すべてみせます アレクセイ・ゲルマン監督特集」が渋谷・ユーロスペースで開催されることとなりました。
寡作で知られるアレクセイ・ゲルマンが残した5作品を貴重な35ミリフィルムにて上映します(『神々のたそがれ』のみデジタル上映)

《特集上映概要》

・特集タイトル:「すべてみせます アレクセイ・ゲルマン監督特集

上映作品:『道中の点検』(1971)、『戦争のない20日間』(1976)、『わが友イワン・ラプシン』(1984)、『フルスタリョフ、車を!』(1998)、『神々のたそがれ』(2013)

・開催期間:2015年9月5日(土)〜18日(金)

・開催場所:渋谷・ユーロスペース
・詳細はこちら→ http://eurospace.co.jp/works/detail.php?w_id=000032

・作品提供:ロシア映画社、パンドラ、アイ・ヴィー・シー
・協力:アテネフランセ文化センター

●アレクセイ・ゲルマン Алексей Герман
1938年、レニングラードに生まれる。父は作家のユーリー・ゲルマン。舞台監督から映画監督に転身し、レンフィルムに入る。1965年にウラジーミ ル・ヴェンゲーロフの「労働者開拓地」で助監督をつとめ、1967年にグレゴーリー・アローノフと共同監督で「七番目の道づれ」を発表。1971年に初めて単独で監督した「道中の点検」は、ペレストロイカ後の1986年に公開されるまで上映を禁止されていた。寡作ながら作品はいずれも世界的に高い評価を受けている。15年の歳月をかけて製作していた『神々のたそがれ』の完成を待たずに2013年2月、サンクトペテルブルクで逝去。
フィルモグラフィー
『道中の点検』(1971)
『戦争のない20日間』(1976)
『わが友イワン・ラプシン』(1984)
『フルスタリョフ、車を!』(1998)
『神々のたそがれ』(2013)

●『道中の点検』
1971年/ソ連/97分/モノクロ/シネマスコープ/35㎜
製作:レンフィルム/監督:アレクセイ・ゲルマン/原作:ユーリー・ゲルマン「“祝新年”作戦」/脚本:エドゥァルド・ヴォロダルスキー/撮影:ヤーコフ・スクリャンスキー、L・コルガノフ、B・アレクサンドロフスキー、V・ミローノフ/美術:ワレーリー・ユルケーヴィチ/音楽:イサーク・シワルツ
出演:ロラン・ブイコフ、ウラジーミル・ザマンスキー、アナトーリー・ソロニーツイン
父ユーリーの小説を映画化したゲルマン初監督作。独軍占領下のソ連北西部、ロコトコフ隊長率いるパルチザン小隊に、一度は敵に寝返りながらそれを悔いて償いたいという元ソビエト軍伍長ラザレフが投降してくるが…。独特のドキュメンタリー・タッチで描かれる、息のつまるようなサスペンス。過酷な状況の中で、友情、信頼、裏切り、反目といった人間の根源的なテーマが浮かびあがる。

●『戦争のない20日間』
1976年/ソ連/102分/モノクロ/シネマスコープ/35㎜
製作:レンフィルム/監督:アレクセイ・ゲルマン/原作・脚本:コンスタンチン・シーモノフ/撮影:ワレーリー・フェドーソフ/美術:エフゲニー・グコフ/音楽:V・ラヴロフ
出演:ユーリー・ニクーリン、リュドミーラ・グルチェンコ、アレクセイ・ペトレンコ、ミハイル・コノノフ
従軍記者ロパーチンが、戦線からはるか後方の故郷タシケントで過ごす20日間の休暇を淡々と描く。彼はこの地で妻との離婚手続きを進め、自分が書いた戦従軍記を基にした映画の撮影現場を訪れるが、演出をめぐって監督らと衝突する。そんな中彼は、ある女性と再会し恋に落ちるのだった。シモーノフの小説を原案に、戦争の傷跡が色濃くのこる町で描かれる成熟した大人の愛の物語。

●『わが友イワン・ラプシン』
1984年/ソ連/98分/モノクロ(パートカラー)/スタンダード/35㎜
製作:レンフィルム/監督:アレクセイ・ゲルマン/原作:ユーリー・ゲルマン/脚本:エドゥアルド・ヴォロダルスキー/撮影:ワレーリー・フェドーソフ/美術:ユーリー・プガチ/音楽:アルカジー・ガグラシヴィリ
出演:アンドレイ・ボルトネフ、ニーナ・ルスラーノワ、アンドレイ・ミローノフ、アレクセイ・ジヤルコフ
1930年代半ば、スターリンによる恐怖政治の時代の前夜。お人好しで控えめだが悪に対しては容赦のない刑事イワン・ラプシンは、地方都市ウンチャンスクで街を震え上がらせる殺人鬼を追っていた。そんな折、ラプシンは女優のナターシャと出会い、親友ハーニンとの淡い三角関係に陥っていく。仲間たちの愛と友情を描いた本作は、内容、表現の両面で画期的反響を内外でよんだ。

●『フルスタリョフ、車を!』
1998年/フランス、ロシア/142分/モノクロ/スタンダード/35㎜
製作:ソダペラーガ+ゴスキノ/監督・脚本:アレクセイ・ゲルマン/脚本:スヴェトラーナ・カルマリータ/撮影:ウラジーミル・イリネ/編集:イリーナ・ゴロホフスカヤ/音楽:アンドレイ・ペトロフ
出演:ユーリー・アレクセーヴィチ・ツリーロ、N・ルスラノヴァ、M・デメンティエフ、Y・ヤルヴェット
1935年、反ユダヤ主義の色濃い時代。赤軍の将軍で大病院の脳外科医でもあるクレンスキーはユダヤ人医師を迫害するKGBの陰謀に巻き込まれ強制収容所で拷問を受ける。しかし、突然解放され、スターリンの側近ベリヤにある要人を診ろと言われるが…。あらゆる説明を一切排除した場面が次々に転換し、強烈なパワーと極度の混乱が当時のロシアの空気を伝えている。

●『神々のたそがれ』
2013年/ロシア/177分/モノクロ/ヴィスタサイズ/DCP
監督・脚本:アレクセイ・ゲルマン/原作:ストルガツキー兄弟「神様はつらい」/脚本:スヴェトラーナ・カルマリータ/撮影:ウラジーミル・イリイン、ユーリー・クリメンコ/編集:イリーナ・ゴロホフスカヤ、マリヤ・アモーソワ/音楽:ヴィクトル・レーベデフ
出演:レオニード・ヤルモルニク、アレクサンドル・チュトゥコ、ユーリー・アレクセーヴィッチ・ツリーロ
とある惑星の都市アルカナル。地球から800年ほど文明が遅れたこの地に、地球から科学者や歴史家らからなる調査団が派遣される。彼らは神のような存在として惑星の人々から崇められるが、政治に介入することは許されず、ただ権力者たちの蛮行と殺戮を傍観するのみであった…。圧倒的なエネルギーと混沌に満ちたゲルマン監督不朽不滅の遺作。

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執筆者

Yasuhiro TogawaYasuhiro Togawa