1948年8月9日、長崎で助産婦として暮らす母のもとへ、3年前に原爆で亡くしたはずの息子がひょっこり現れる。楽しかった思い出話や、残していった恋人の話をして過ごす二人の日々を描いた、山田監督が初めてつくる、やさしく泣けるファンタジーです。
作家・井上ひさしさんが、広島を舞台に描いた『父と暮せば』と対になる作品を、長崎を舞台につくりたいと発言していたことを井上さんの三女・麻矢さんを通じて知った山田監督が、終戦70年となる今年、その井上さんの想いに捧げ映画化にのぞみます。そして、母・伸子役に吉永小百合、息子の浩二役に二宮和也、浩二の恋人・町子役に黒木華という理想的なキャスティングが実現しました。

この度、本作にて音楽を坂本龍一氏が担当することが決定いたしました。
山田洋次監督とは今回が初タッグ。昨年より療養中だった坂本氏にとって、今作が復帰第一作となります。

今作の企画が立ち上がってすぐに、山田監督から坂本氏の名前が挙がり、映画音楽の仕事をオファーしたところ、『男はつらいよ』シリーズの大ファンだという坂本氏もすぐさま快諾し実現に至りました。
企画が立ち上がって間もない2014年4月、山田監督は吉永小百合さんとともに東京芸術劇場で行われた坂本氏のコンサートを訪れています。吉永さんはライフワークとしている原爆詩の朗読で坂本氏がピアノ伴奏を担当するなど、坂本氏とは親交があり、このコンサートで山田監督に坂本氏を紹介したことが今回の話のきっかけともなっており、吉永さんが二人をつなぐのに一役買ったかたちとなりました。

本作は4月下旬から7月中旬までの約2ヶ月半におよぶ撮影を終え、秋の完成に向け、現在ポストプロダクション中。

<坂本龍一コメント>
『寅さん』映画は、歳をとるほどに味わい深く感じられます。最近などはタイトルバックの江戸川が見えるだけで、涙目になってしまいます。もう帰ってくることのない昭和の日本への郷愁でしょうか。小津安二郎や成瀬巳喜男の映画にも共通のものを感じます。 その山田洋次監督から、次回作の音楽を頼まれました。しかも吉永小百合さんが同席しています。この二人に何かを頼まれて断れる日本人がいるでしょうか。そして内容は井上ひさしさんの『父と暮せば』へのオマージュとして呼応するように、長崎が舞台となっています。核のない世界を望んでいるぼくとしては、これはやるしかありません。 このような大作が、病気からの復帰後第一弾の仕事なのですから、ぼくは本当に幸せ者です。
坂本龍一

<山田洋次監督コメント>
『母と暮せば』の企画を発想したとき先ずぼくの念頭にあったのは、主役は吉永小百合、音楽は坂本龍一、このお二人しか考えられないということでした。最初に吉永さんの承諾を得てそのあと、彼女と二人でコンサート中の坂本龍一さんの楽屋に押しかけ口づてで企画を話しました。彼の口から快い承諾の返事を聞いたときは本当に嬉しかったものです。坂本龍一さんと組んで仕事をするのは長年の夢でした。ぼくの頭の中にはすでに坂本龍一の美しい音楽が鳴り始めています。
山田洋次

<吉永小百合コメント>
昨年の四月、山田監督とご一緒に坂本さんのコンサートに伺いました。
坂本さんが『母と暮せば』の音楽を創って下さることになって、嬉しくて嬉しくて舞い上がっています。
吉永小百合

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執筆者

Yasuhiro Togawa