『単一民族神話の起源』、『<民主>と<愛国>』、『1968』などの著作で数々の賞を受けた歴史社会学者の小熊英二氏による初監督作品『首相官邸の前で』の公開が、9月2日(水)より隔週水曜日に渋谷アップリンクにて決定いたしました。公開に先がけ、8月5日(水)と8月19日(水)には、小熊監督によるアフタートーク付きのプレミア上映も開催いたします。

2011年3月11日の東京電力福島第一原発の事故をきっかけに、市民は抗議行動を始めた。
東京で起こった脱原発大規模デモ、そして、首都圏反原発連合が生まれ首相官邸前に20万の人々が集まった様子を、当時の記録映像と関係者のインタビューで構成。

2012年夏、東京。約20万の人びとが、首相官邸前を埋めた。NYの「ウォール街占拠」の翌年、香港の「雨傘革命」の2年前のことだった。
 しかしこの運動は、その全貌が報道されることも、世界に知られることもなかった。
 人びとが集まったのは、福島第一原発事故後の、原発政策に抗議するためだった。事故前はまったく別々の立場にいた8人が、危機と変転を経て、やがて首相官邸前という一つの場につどう。彼らに唯一共通していた言葉は、「脱原発」と「民主主義の危機」だった——。
 はたして、民主主義の再建は可能なのか。現代日本に実在した、希望の瞬間の歴史を記録。

「私は、この出来事を記録したいと思った。この映画の主役は、映っている人びとすべてだ。その人びとは、性別も世代も、地位も国籍も、出身地も志向もばらばらだ。そうした人びとが、一つの場につどう姿は、稀有のことであると同時に、力強く、美しいと思った。歴史家である私がいまやるべきことは、これを記録し、後世に残すことだと思った。」 ──小熊英二

<監督プロフィール>

小熊英二(おぐま・えいじ)
1962年東京生まれ。出版社勤務を経て、慶應義塾大学総合政策学部教授。福島原発事故後、積極的に脱原発運動にかかわり、メディア上での発言も多い。2012年の著作『社会を変えるには』で新書大賞を受賞。他の著作に『単一民族神話の起源』(サントリー学芸賞受賞)、『<民主>と<愛国>』(大仏次郎論壇賞、毎日出版文化賞)、『1968』(角川財団学芸賞)など。映像作品の監督は今回が初めてだが、脱原発運動のなかで得ていた信用のために、多くの映像提供などの協力を得ることができた。

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執筆者

Yasuhiro Togawa