「いかなる争いも揉め事もない平和な管理社会が築かれた近未来。飢餓も貧困もなく、全ての苦痛が排除され、完全な平等世界であるコミュニティーは、まさに理想郷であった。過去の記憶を一切持たない住人たちは、指定服の着用と感情の高揚を抑制する毎朝の投薬、そして正直であることが義務づけられ、長老委員会が指定する職業に就いていた。

少年ジョナス(ブレントン・スウェイツ)は、養育センターで働く父(アレクサンダー・スカルスガルド)と母(ケイティ・ホームズ)、そして妹の4人で家族ユニットを組んでいたが、職業任命の儀式で主席長老(メリル・ストリープ)から〈記憶を受け継ぐ者〉=ザ・レシーヴァーに指名される。だが、それは最も名誉ある仕事であると同時に、苦痛と孤独を強いられる辛い職業でもあった。全コミュニティーの過去の記憶を唯一蓄えている賢者〈記憶を注ぐ者〉=ザ・ギヴァー(ジェフ・ブリッジス)から人類の記憶(歴史)を日々伝達されることになったジョナスは、気候制御のために排除された〈雪〉や〈色彩〉〈音楽〉〈愛情〉〈夢〉といった様々な事象の存在を知っていく。

やがて〈戦争〉の残虐さと、同一化計画を進める長老委員会が〈解放〉と言い換えている〈殺人〉を目の当たりにしたジョナスは、安全で差別のないコミュニティーの裏側に隠された秘密と真実、そして共同体の限界を痛感、現状を変える旅に出ることを決意するが……。

原作である『ギヴァー 記憶を注ぐ者』は、児童文学者ロイス・ローリーが書いた人気小説で、1994年にニューベリー賞を受賞した。世界中で1000万部も売れてベストセラーとなっている。ロイス・ローリーは1937年生まれ。ハワイ出身のアメリカ女性で、少女時代を東京で過ごしたこともある。日本では現在、新評論から出版されている。

9月5日(土)より渋谷HUMAXシネマほかにて全国ロードショー

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執筆者

Yasuhiro Togawa