「日本人にとって「水をください」という言葉が何を意味するかわかるでしょうか」

空襲の音が花火になり蝉時雨になる。
こんな音から始まる映画をご存知でしょうか。
福間健二監督の2011年の作品『わたしたちの夏』です。

本作は、アラフォー女性がかつて一緒に暮らした男性とその娘に再会するひと夏を描いた劇映画ですが、その背景には大きな”日本の夏”が存在しています。
原爆が落ちた夏、戦争が終わった夏、死者が帰ってくる夏、暑い日本の夏。
原民喜の「水ヲ下サイ」「夏の花」のテキストが繰り返し引用されながら、ストーリーは進行していきます。

日本人が抱く夏という季節をこれほどまで深く鮮やかに表現した作品は稀有なものです。
『わたしたちの夏』は、原爆が落ちて、戦争が終わってから70年間、日本人はこのような死者と対話し、かつての戦争に想いを馳せながら過ごす”日本の夏”を繰り返してきたのだろうと思わせます。

そしてこれからも、このような日本の夏を迎えられるように、戦後70年を迎える今年の夏、ポレポレ東中野では『わたしたちの夏』の再上映を行います。
公開時は夏の終わりから秋にかけての時期でしたが、真夏に上映したかった作品です。

『わたしたちの夏』2015年夏再上映にあたって 監督よりメッセージ

日本人にとって、夏とはどういう季節だろう。メディアが戦争を特集する。お盆がある。セミがうるさい。のどが渇く。「水をください」という声がきこえてくる。死者が帰ってくる季節だ。だれでも会いたい死者がいる。 暑さのなかで死者を思うことは、わたしたちの生に何をもたらすのか。わたしたち、生きている者、あなたとわたし。『わたしたちの夏』の構想はそこからはじまり、キャスト、スタッフ、汗まみれになって撮影した。

福間健二

上映情報
8月1日(土)〜7日(金) 一週間限定レイトショー!
連日21:00より 1200円均一(初日8/1は映画サービスデーにつき1000円均一)
★8/1(土)、2(日)福間健二監督来場決定!!

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執筆者

Yasuhiro Togawa