おかあさんはどんな人だったの?
亡き母の過去をたどるうち、いま、少女の前で世界は残酷に変容してゆく。

『Dressing Up』は多感な年代の少女が死んだ母親に近づきたいと切望し、追体験するうちに、知らなかった母の隠された闇に魅せられていく姿を描いた作品である。自らの内にいる怪物に気づいた彼女は、いつか自分も母と同じになってしまうのでは、という考えに囚われる。その怖れが反響したかのように想像は現実を侵食しはじめ、やがて世界は彼女の前で変容してゆく。

 けっして開けてはならない箱を開けてしまったことから、世界に対して孤独な闘いを挑むことになる主人公の少女を演じたのは、柴田剛監督『堀川中立売』(2010)や人気バンド・神聖かまってちゃんのMV「夕方のピアノ」(2010)で強烈な個性を放ち話題を呼んだ祷(いのり)キララ。撮影当時は小学6年生ながら堂々たる演技と存在感が高く評価され、第14回「TAMA NEW WAVE」ベスト女優賞、第7回「田辺・弁慶映画祭」主演女優賞、第8回「CO2(シネアスト・オーガニゼーション・大阪エキシビション)」新人俳優賞と、国内の映画祭で女優賞三冠を果たした。

妻亡きあと、誠実に娘と接し育ててきたつもりが、そのやさしさがかえって彼女の心の奥底を刺激してしまうことになる父親役に鈴木卓爾。『夏の思い出〜異常快楽殺人者〜』(95/斉藤久志監督)に主演後、日本映画に欠かせないバイプレイヤーとして様々な監督の作品で存在感を放っている彼は、『ゲゲゲの女房』(2010)、『楽隊のうさぎ』(2013)などの作品を監督し、映画監督としても高い評価を受けている。今回、監督の強い希望により出演が叶い、その期待にこたえて複雑な感情を持つ父親を繊細に表現している。

監督は安川有果。映画作家の人材発掘と制作支援を目的として2005年に大阪市が立ち上げたCO2(シネアスト・オーガニゼーション・大阪エキシビション)の企画募集において、選考委員であった黒沢清監督、山下敦弘監督らに選出され本作を監督。撮影当時25歳、初の長編作品でありながら、オリジナリティ溢れるストーリーが話題を呼び、第14回「TAMA NEW WAVE」でグランプリ受賞するなど高い評価を受けた。撮影は映画『超能力研究部の3人』(2014)やテレビドラマ「山田孝之の東京都北区赤羽」(2014)などの山下敦弘監督作品や三宅唱監督『Playback』(2012)など、新世代の監督たちの作品に欠かせない存在となった四宮秀俊が担当。助監督に監督作『灰色の烏』(2015)が公開されたばかりの清水艶、制作に監督作『螺旋銀河』(2015)が公開待機中の草野なつかが参加するなど、次世代の日本映画を担う注目のスタッフが集結した作品となっている。

予告編::http://youtu.be/6SGuW-VNFnc

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執筆者

Yasuhiro TogawaYasuhiro TogawaYasuhiro Togawa