止まらない。シリーズが誕生して36年を経て完成した最新作だが、大ヒットの要因の核になるのは、主役を務めたイギリス人俳優、トム・ハーディのマックスぶりが熱烈に歓迎された結果であることは論を待たない。
寡黙な肉体派で、メル・ギブソンが演じたマックスとは異なる「新たなマックス」を演じたトム・ハーディは、1977年生まれで現在37歳の英国人俳優。待機作には、アレハンドロ・G・イニャリトゥ監督作でディカプリオと共演、狩猟家を描く『The Revenant』、ミステリーサスペンス『London Road』、ギャングを演じる『Legend』等、全世界が今後の活躍に最も期待する俳優の1人だ。
そしてこの夏、6月20日(土)の『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を皮切りに、主演作が3本連続で公開される。日本の夏を熱くする俳優、トム・ハーディが演じる3つのキャラクターに迫る。

ACT-1 愛する家族を失い、資源が枯渇し荒廃した砂漠を彷徨う元警官マックス。
『マッドマックス』といえば、メル・ギブソン。全く無名だったメルを狂気の淵に追い込んで大スターに押し上げたのは、シリーズの創始者であるオーストラリアの映画監督ジョージ・ミラーだ。
トム・ハーディは、名匠リドリー・スコットの『ブラックホーク・ダウン』(2001)でハリウッド・デビュー。演技派として一躍注目を集めた『裏切りのサーカス』(11)では、首刈り人リッキー役で異才を放った。また、禁酒法時代を舞台にした『欲望のバージニア』(12)では寡黙だが不屈の長男を演じている。
トムの名を一躍世界に知らしめたのは、クリストファー・ノーラン監督の『インセプション』(10)、そして、凶悪でフルフェイスのマスクで顔を隠し冷酷な悪役ベインを演じた『ダークナイト ライジング』(12)での怪演振りだ。
日本公開を前に来日したジョージ・ミラー監督は、「第1作の『マッドマックス』(1979)が公開されたとき、トムは生後6週間だった」と笑う。「新たな作品のためには、自分の中にマックスを見いだせる俳優が必要だった。ナイーブな一面と、何をしでかすかわからない、内に秘めた野生を兼ね備えた俳優、それがトム・ハーディだ」と、新マックス起用のポイントを語っている。
トム・ハーディは、「メル・ギブソンのマックスは伝説だ」と言う。「でも、ジョージにこのキャラクターを演じてくれと言われたとき、僕は、この『怒りのデス・ロード』のストーリーに合ったマックスを創り直すため、ジョージとのコラボレーションを始めた。これはすばらしい題材であり、この役を演じるのは大きな名誉だよ」と語っている。メル・ギブソンとランチを共にしてマックスというバトンを渡されたトム・ハーディは、どんな演技を見せるのか。じっくりとスクリーンで確かめて欲しい。

ACT-2 建築家としてのキャリアも家族をも捨ててハイウェイを走るアイヴァン。
6月27日(土)から公開されるのは『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』。
スクリーン登場する人物はトム・ハーディだけという異色の映画だ。
主人公アイヴァン(トム・ハーディ)が、ただBMWを運転して高速道路を走るワンシチュエーションで描かれるユニークな作品になっている。
僅か4日間のリハーサルと、8日間の撮影期間で完成されたこの作品は、大手建設会社の社員で、現場監督でもある主人公が、1本の電話を受け取って、ロンドンへとハイウェイをひた走る姿を描く。
実はこのドライヴ、彼にとって人生の大転換となる86分間なのだ。翌日に迫った大規模な工事、自宅で待つ家族との約束をかなぐり捨てて、ただただ走るだけ。部下への指示、妻への電話、上司からの叱咤、そして息子からの電話。カメラはひっきりなしにかかる電話と、刻一刻と変わるトム・ハーディの表情だけをとらえていく。時に歯ぎしり、時に鼻をかみ、時に「MAD」と毒づきながら、ハーディはミニマルな演技によって、LA批評家協会賞、トロント映画批評家協会賞で主演男優賞を受賞している。

ACT-3 国家保安省エリートから転落するも、国家が認めぬ殺人事件に挑むレオ。
そして7月3日(金)から公開されるのは、2009年の「このミステリーがすごい!」海外編で第1位に輝いたベストセラー小説を、ハーディのハリウッド・デビュー作の監督リドリー・スコットがプロデュースした『チャイルド44 森に消えた子供たち』だ。
1953年、スターリン政権下のソ連を舞台にしたこの作品で、トム・ハーディは国家保安省のエリート捜査官を演じている。戦争の英雄としても一目置かれるレオだが、ある日、愛する妻にスパイ容疑かかけられる。妻を告発しなければならぬ立場に追い込まれた彼は、迷うことなくすべてを捨てて愛する妻と生きることを選択し、左遷の憂き目にあう。
地方都市には、保身ばかりを考えるネステロフ将軍(『裏切りのサーカス』で共演したゲイリー・オールドマン)が待っていた。あばら屋での暮らしが始まったある日、森の中で見つかった幼い少年の死体を見て彼は愕然とする。その死因は、国家保安省時代に見た戦友の息子に刻まれたものと全く同じだったのだ。
理想国家を掲げる社会主義国家では犯罪など存在してはならない。子供の変死体をめぐって、レオは事件解明を決意する。だが、彼の前には容赦ない独裁国家による妨害が待ちうける。
すべてを奪われながらも、愛する妻と仲間との友情のために命がけの捜査に挑むレオを演じ、ドラマティックなシーンから荒々しいアクション、繊細な演技まで、感情の振り幅が広い難役で新境地を披露している。

<1>愛する家族を失い、資源が枯渇し荒廃した砂漠を彷徨う元警官マックス。
<2>建築家としてのキャリアも家族をも捨ててハイウェイを走るアイヴァン。
<3>国家保安省エリートから転落するも、国家が認めぬ殺人事件に挑むレオ。

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を皮切りに、トム・ハーディが「すべてを失った男」を演じる3作品が連続公開される。この夏、日本の映画を熱くする男、トム・ハーディに注目すべし!

6/20(土) 公開『マッドマックス 怒りのデス・ロード』公式サイト:http://www.madmax-movie.jp/
©2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED

6/27(土)公開 『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』公式サイト:http://www.onthehighway.net
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7/3(金)公開 『チャイルド44 森に消えた子供たち』公式サイト:http://child44.gaga.ne.jp
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執筆者

Yasuhiro TogawaYasuhiro Togawa