6月8日(現地時間7日)、アメリカ演劇界で最も権威ある「第69回トニー賞授賞式」が、ニューヨークのラジオシティ・ミュージックホールで開催。WOWOWでは昨年に引き続き、その華やかな授賞式の模様を生中継した。今回は、ミュージカル主演男優賞に「王様と私」のリバイバル公演で19世紀のシャム王を演じた渡辺謙がノミネートされ、同部門日本人初の受賞なるかで注目された。今回のブロードウェイ・ミュージカル初主演を「55歳にして人生最大の試練」と考えていた渡辺は、授賞式開始前、レッドカーペットでWOWOWのインタビューに答え、「前評判では、僕を含めた5人の候補の誰が受賞してもおかしくないという状況。僕にもチャンスはあると思いますが、どうなってもいいように腹を決めて結果を待ちたいと思います」と正直な気持ちを語った。

WOWOWのスタジオからは、案内役の宮本亜門と八嶋智人、スペシャル・サポーターの井上芳雄、ゲストの黒柳徹子がニューヨークの渡辺にエールを送った。トニー賞は各候補作のキャストが公演さながらに繰り広げるパフォーマンスも魅力だが、「王様と私」のチームは劇中歌3曲のメドレーを披露。英国から家庭教師としてタイの王室にやってきたアンナ(ケリー・オハラ)の歌“Getting to Know You” 、王の第一夫人(ルーシー・アン・マイルズ)の“Something Wonderful” の後に、同作を代表する名曲“Shall We Dandce?”で渡辺がケリー・オハラと共に軽快にダンス。王が「Come(来い)」と言って、アンナの腰に手を回しグッと引き寄せるところでは、会場から歓声が飛んだ。

「王様と私」は、9部門のノミネートのうち4部門で受賞。ミュージカル助演女優賞のルーシー・アン・マイルズ、ミュージカル衣装デザイン賞と次々と受賞し、最も重要とされるミュージカルリバイバル作品賞も獲得すると、WOWOWのスタジオも大いに盛り上がったが、惜しくもミュージカル主演男優賞は「ファン・ホーム」のマイケル・サルベリスに。しかし、その直後、ケリー・オハラが6度目のノミネートにして念願の初受賞を果たし、稽古中から苦楽を共にした渡辺も目に涙を浮かべて祝福した。トロフィーを手にしたケリー・オハラは「私はこの仕事を愛しています。ここに導いてくれた両親とこの作品のキャスト・スタッフみんなに感謝したい」と語り、「ケン・ワタナベは本当に私の王様」と感謝の気持ちを表現した。渡辺の受賞はならなかったが、宮本は「王様役はユル・ブリナーのイメージが強いけれど、謙さんは演出家とともに新しい王様像を作り上げた」と分析。八嶋も「これだけ評価された作品の中心に謙さんがいるってことですから」と同意した。黒柳は「受賞してほしかったけれど、謙さんにはまだまだこれから希望がありますね」と笑顔を見せた。日本のミュージカルで活躍する井上は「謙さんの日々挑戦していく生き方に感銘を受けました。ブロードウェイは夢の舞台だけど、信じていればいつかはという気持ちにさせてもらえた」と感激の面持ちに。さらに、元宝塚歌劇団の星組トップスター、柚希礼音も中継に途中参加し、「これからブロードウェイ・ミュージカルの日本公演に出演するのですが、今日はトニー賞授賞式を見られてよかった」と大いに刺激を受けた様子だった。

 ミュージカル部門の最多受賞作品は、ゲイの父親から生まれた娘が自分も同性愛者だと自覚した10代の思春期を振り返る「ファン・ホーム」。ステージでは、弱冠12歳の子役シドニー・ルーカスが堂々たる歌唱を披露した。演劇部門の最多受賞作品は「夜中に犬に起こった奇妙な事件」。アスペルガー症候群の少年が主人公で、プロジェクション・マッピングを使った斬新な舞台演出も見もの。同作で演劇主演男優賞を獲得したアレックス・シャープは「この作品は、自分を変わり者だと思っている人たちに捧げます」と語った。

 他に、授賞式では候補者やプレゼンターであるヘレン・ミレン、ブラッドリー・クーパー、キーファー・サザーランド、スティング、ジェニファー・ロペスらに注目が集まった。有名スターが次々に登場する豪華な授賞式の模様は、6/13(土)夜8:00、WOWOWライブで字幕版を見ることができる。

http://www.wowow.co.jp/stage/tony/

執筆者

Yasuhiro Togawa