この数か月、毎日のように報道される著名人の闘病や死亡のニュース。その病名の多くが〝がん″です。
今年の4月30日、治療中の大腸がんが末期であることを会見で公表した俳優・今井雅之さんは、前年11月に末期がんの告知を受け、それからわずか半年後の今年5月28日、54歳でこの世を去りました。漫才コンビ「今いくよ・くるよ」の今いくよさんもまた、同日5月28日に胃がんの為67歳で死去。その他にも、ピアニストの中村紘子さんやタレントの大橋巨泉さん等、闘病について語る著名人は少なくありません。家族ががんを患う心境を吐露したのは、父親が2月に他界したSMAP・中居正広さんや母親の闘病を公表した米アーティストのテイラー・スウィフトさん。がん闘病を公表することで、少しでも早期発見・検査への啓蒙が進めばという気持ちがあるようです。

今や、日本人の2人に1人ががんに罹り、3人に1人ががんで死亡する時代(全国健康保険協会公式サイト(平成26年4月1日の記事)より)。中でも男女ともに近年急増しているのが〝大腸がん“(大腸がん=結腸がん+直腸がん)。
2011年に新たに日本で診断された大腸がん罹患数は男性72101人、女性52820人で今だ増加傾向にあります。部位別死亡数を最新の2013年のデータで見ると、女性は2万1846人で1位、男性は2万5808人で3位になっています(がん情報サービス(国立がん研究センターがん対策情報センター)より)。

全国公開中の映画『夫婦フーフー日記』は、実在の夫婦、清水浩司(ダンナ)さんと睦(ヨメ)さんのブログから誕生した物語。
作家志望で音楽誌編集者だった浩司さんと本好きの睦さんは、17年の友人関係を経て37歳で結婚。入籍1か月後に妊娠がわかり喜びも束の間、睦さんの直腸に悪性腫瘍がみつかります。いわゆる〝大腸(直腸)がん″です。病気発覚後、離れて暮らす家族や友人へ彼女の病状を伝えるため、 “川崎フーフ”という名で「がんフーフー日記」という闘病ブログを開始。睦さんは、妊娠28週で念願の男児を出産し、闘病に励むも、38歳という若さでこの世を去りました。次々と起こる事態の中で、最期まで精一杯笑って生きた493日の夫婦の日々を綴ったブログは人気を博し、2011年に書籍化、そしてこの度映画が誕生。

睦さんの闘病がきっかけとなって、彼女の友人の中には毎年彼女の命日付近に人間ドックを受けるようになった方もいたとのこと。ダンナ・浩司さんは、「検診を受けることは必要だと強く思います。病気というのは、本人自体も辛いですが、周りにも悲しい思いをさせることが多いです。もし自分の身近に大切な人がいるのであれば、その人の為にも、自分の身体のケアをしっかりして欲しいと思います。」と語っています。俳優・梅沢富美男さんは、生前の今井雅之さんに大腸検査を勧められたそう。検査で見つかったポリープはいずれも良性だったが放っておけばがんになる可能性もあったということです。日本人にとって〝がん″が日常となる今、自分や家族、友人が闘病することになった時どのように向き合うべきか、この映画のモデルになった夫婦の経験を通して今一度考えてみてはいかがでしょうか。

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執筆者

Yasuhiro Togawa