1979年4月12日、シドニーの映画館で一本のオーストラリア映画が公開された。その映画『マッドマックス』は、徹底して本物にこだわった強烈でリアルなカースタント、容赦なしのヴァイオレンス描写によって、アクション映画の常識を破壊し、大ヒットを飛ばした。
『マッドマックス』で、寡黙だが人間味に溢れた一匹狼のアウトロー、家族を殺された警官マックスを演じたのは、当時全く無名だったメル・ギブソン。続く『マッドマックス2』(1981年)でその人気を不動のものとし、1985年に『マッドマックス/サンダードーム』も製作された。

『マッドマックス』シリーズの創始者ジョージ・ミラーは、オーストラリアの医学大学出身という異色の経歴を持つ鬼才。リアリティに対する徹底したこだわり、全てが枯渇し、荒廃した世界を舞台に、改造車、バイクを駆る暴徒たちと、寡黙なヒーローが対峙する世界を描くスペシャリストだ。ロード・ウォリアーズ(暴走族)の原型を生み出し、鳥籠のような金網のバトルフィールドの創造主でもある。ジョージ・ミラーが生んだ”マッドマックス”は、”激ヤバ”感覚の代名詞になり全世界に拡散、現在も増殖を続けている。
そしてシリーズ第3作の公開から約30年の歳月を経た今年、最も危険な映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』が完成間近となった。他の追随を許さない容赦なきバイオレンス、走り出したら止まらない究極のカーチェイスが、かつてない衝撃波となって観客に襲いかかる。

今回公開された日本版ポスターは、トム・ハーディ演じる主人公マックスと、シャーリーズ・セロンがスキンヘッドで挑む、女ロード・ウォリアー、フュリオサが、金色の砂漠でライフルを構える姿をとらえる。ふたりの前にはバイクと何者かが横たわり、背後には彼らを追うイモータン・ジョー(ヒュー・キース・バーン)の軍団の影が、火炎のような砂塵を巻き上げて迫っている。

この劇場用のポスターだが、実はキャッチコピーが入っていない。ハリウッドのアクション大作としては異例となる代物なのだ。ティザーポスターに続き、2種類の劇場用ポスターにあるのは、キャストの名前と作品のタイトル。つまり、”マッドマックス”というタイトルそのものが、時代を挑発するメッセージとなっているのだ。誕生から30年以上の歳月を経て、今、新たな”マッドマックス”が、日本への挑発を開始した。

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は、5月14日(仏時間)にカンヌ国際映画祭で[特別招待作品]としてヨーロッパプレミア上映、翌15日から全米を始めとする世界の主要テリトリーで公開され、6月20日(土)に待望の日本上陸を迎える。
アクション映画の常識を再び破壊する”マッドマックス”の襲来まで約2ヶ月。心して待て!

関連作品

http://data.cinematopics.com/?p=50713

執筆者

Yasuhiro Togawa