ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督最新作『サンドラの週末』が、5月23日(土)にBunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開となります。

不当に解雇を言い渡されたサンドラが、仕事を続けるための条件—16人の同僚が、ボーナスを諦め、自分の復職に投票してくれること。
サンドラは夫に支えられながら1人1人の家を回り説得を試みる…。マリオン・コティヤールは、繊細ながらも必死に同僚の元を訪ね歩く等身大の主人公サンドラを熱演。常に不安げで、自分に自信の持てない女性が、同僚を訪ねるなかで、徐々に自分にも、そして周りにも希望を見出していく姿には、観ている誰もが心を強く揺さぶられます。

フランスを代表する歌手エディット・ピアフの生涯を描いた『エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜』(07年)で第80回アカデミー賞主演女優賞を受賞したマリオン・コティヤール。以降も、映画界をけん引する、数々の監督から熱烈なオファーを受け続けいる彼女の魅力とは…!?
マリオン・コティヤールの魅力について、本作の監督ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督が明かします。

—— 偉大な女優はすべてを捨てられる。マリオン・コティヤールはそれができる役者なんだ。

第52回カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞『ロゼッタ』(99年)では、新人女優エミリー・ドゥケンヌに同映画祭女優賞を、『息子のまなざし』(02年)では、主演のオリヴィエ・グルメに第55回カンヌ国際映画祭男優賞をもたらした、ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督。
入念かつ徹底したリハーサルを行う中で役者のポテンシャルを引き出し、カメラを意識させない自然な姿をスクリーンに映し出し、高く評価されてきた。

今回も『サンドラの週末』で、混戦するアカデミー賞主演女優賞へのノミネートや、10の主演女優賞を主演のマリオン・コティヤールへもたらした。
彼女について、ジャン=ピエール・ダルデンヌ監督は「マリオンは、とても賢く、寛大で気前のよい女性です。また同時に、偉大な女優です。
自分自身が役柄の後ろにいなければいけないということをすぐに理解してくれました。彼女が、それまで映画でつくって来たイメージや、ミューズを務めるブランドのイメージ、そして世間が彼女に持つあらゆるイメージ。それらすべてを消し去り、マリオンはサンドラになってくれました。
このように自分を忘れさせることのできるのが本当の偉大な女優なんです。」と語った。

続けて、リュック・ダルデンヌ監督は、「彼女は撮影に入る前に『私をあなたたちの思うようにしてくださって結構です。』と宣言し、私たちに身を任せてくれました。他の俳優・スタッフと食事も移動も控え室も一緒。専用のヘアメイクもドライバーも一切つけませんでした。
何でもないことのようですが、こういったことは、仲間意識を作るのに重要なことで、映画にも繋がっていきます。
また、私たちが出す細かな注文を全て受け入れ、突き詰め、そして彼女からも提案し、演技にも工夫をしてくれました。
マリオンは、女性、そして女優としても本当に素晴らしい人です。」と、国際的に活躍するハリウッド女優でも、一切妥協はしないダルデンヌ兄弟のもと、役者として果敢に作品に挑んだマリオンの姿を明かした。

—— また、ダルデンヌ兄弟と映画を撮りたい?シナリオを読むまでもなく、答えはYESです

撮影前、1か月にも及ぶリハーサルを行ったという『サンドラの週末』。本作は、全編フランス語だが、フランス人であるマリオンは、このリハーサル期間で、舞台となるベルギーのアクセントを会得し、その土地の環境に馴染んでいったという。

衣装や髪型、登場人物が乗る車の車種など、細部まで設定し、テイク数を重ねながら真実味にこだわった演出をする
ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督。サンドラが着ているピンク色のタンクトップなど、印象的な色の衣装について「美しい色味の衣装にしたのは、自分に自信がなく、病み上がりで弱っている主人公サンドラに一つでも輝きを与えたかったからです。
衣装については、色々と悩みましたが、リボンのデザインがプリントされているTシャツは、マリオン自身が私たちの意図をくみ取り、気に入って選んだものなのです。」とマリオン自身がこだわり、提案していたことを明かした。

また、マリオン・コティヤール自身も『サンドラの週末』について、「これまで多くの作品に関わり、素晴らしい経験をしてきましたが、間違いなくいちばん深く、理想的なものでした。これほど、演出家たちに寄り添ってもらっていると感じたことはありません。
最終カットの時には、物語が、撮影が終わってしまうんだと思うと、心の底から悲しくなりました。」と語っている。
その言葉を裏付けるかのように、リュック・ダルデンヌ監督は先日の来日の際に、「マリオンは最終カットの後、号泣してしまったんだよ。」と、マリオンとリュック・ダルデンヌ監督、ジャン=ピエール・ダルデンヌ監督が3人で肩を組みながら、クランクアップ直後に泣いている写真をプライベートで大切に保存しており、深い信頼関係が垣間見えるエピソードを話してくれた。

また、ダルデンヌ兄弟との再タッグについてマリオン・コティヤールは「彼らが望むなら!シナリオを渡してくれるにも及びません。すぐにイエスです。
また一緒に映画を作りたいです。」と語り、ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督も「いつか、もう一度彼女と仕事をする日がくるかもしれませんね。」
と語っている。

次々と話題作に出演するマリオン・コティヤールが出演を熱望したジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督の初出演作、『サンドラの週末』。
監督との深い信頼感の中でマリオンが演じた、繊細かつ力強い女性サンドラ。ぜひ、マリオン・コティヤール渾身の熱演を、スクリーンで確かめてみてはいかがだろうか。

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執筆者

Yasuhiro Togawa