この度、第67回カンヌ国際映画祭にてパルム・ドール大賞受賞作品、「Winter Sleep(英題)」の邦題が、『雪の轍(わだち)』に決定いたしました。日本公開は6月27日より、角川シネマ有楽町および新宿武蔵野館ほか全国順次公開です。

本作品は、カッパドキアを舞台に、今はホテルのオーナーとして暮らす元舞台俳優のアイドゥンと、若く美しい妻、そして妹との愛憎、さらに主人公への家賃を滞納する聖職者の一家との不和を描きます。彼らの住むカッパドキアに雪が積もるにつれ、お互いの内面が静かに明らかになっていき、ストレートな言葉で感情をぶつけ合う彼らには、そこはかとない滑稽さも漂い、見応えのある作品となっています。
また、文豪チェーホフの著作をモチーフとし、シェークスピアやイングマール・ベルイマンの趣もあり、濃厚な世界観と人の心をえぐる展開、そして圧倒的な映像美によって紡がれる3時間16分に、世界的なメディアから絶賛が相次ぎました。

監督は、カンヌ国際映画祭コンペティション部門にてグランプリを2回(2011年「昔々、アナトリアで」、2003年「冬の街」)と監督賞(2008年「スリー・モンキーズ」)を受賞したトルコが誇るヌリ・ビルゲ・ジェイラン。
満を持してのパルム・ドール大賞受賞作品であり、初の日本劇場公開作品です。

『雪の轍(わだち)』主な海外評

観れば無傷では帰れない、その記憶が焼きついて離れない!!—テレラマ

信じがたい力と知性。—ステュディオ・シネ・リヴェ

見事な傑作!!—ガーディアン

知らぬ間にあなたの世界観を変えてしまう映画などそうあるものではない。この映画はそれだ。—パリ・マッチ

壮大なフレスコ画のようでありながら、観る者の感情を高まらせ、あまりにも人の心を抉る。
その感動を人と分かち合うことが惜しまれるほどに。—ポジティフ

チェーホフとシェークスピアの間—感情が風景になり、風景が感情となる。感情の凍り付き、そして魂の雪解け。
人間という存在の真実が絶えず震えている。言葉は壊すと同時に救い、映像は映している以上のものを映し出す。—マリアンヌ

絶頂期のイングマール・ベルイマンのようだ。豊かな力と美しさを併せもつ深い物語へと私たちを誘う、卓越した傑作。—ル・パリジャン

ヌリ・ビルゲ・ジェイランは、哲学者である。あらゆるものを蝕む様々な矛盾と、人間としての条件を残酷かつ静謐に捉える。
それでも、この映画は光に満ちている。—ル・ジュルナル・デュ・ディマンシュ

美しく長い物語は、徐々に抽象性を失い、骨の髄にこたえるものになってゆく。—ソー・フィルム

これはロマンにあふれた心の中の旅だ。
壁を破る押し殺した言葉、風景を満たす怒りに満ちた身振りに、眠っていた冬の風景が目覚めていく。 —レクスプレス

野心的な企てと確かな手法、心つかむカッパドキアの風景、視線の正確さ。
3時間の冬の物語に身を浸すにはそれが十分な理由だ。—ル・モンド

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執筆者

Yasuhiro Togawa