誰もが心奪われた。ロンドン、愛の物語。

『クラウド アトラス』や「007」シリーズのQ役など数々の作品で強い印象を残し、現在の英国俳優ブームをベネディクト・カンバーバッチらとともに牽引する、ベン・ウィショーの最新主演作の予告編が完成した。

ロンドンの介護ホームでひとり暮らすカンボジア系中国人のジュン(チェン・ペイペイ)。
英語ができない彼女の唯一の楽しみは、優しく美しく成長した息子のカイ(アンドリュー・レオン)が面会にくる時間。しかしカイは、自分がゲイで恋人リチャード(ベン・ウィショー)を深く愛していることを母に告白できず悩んでいた。そして訪れる突然の悲しみ。リチャードはカイの”友人”を装ったまま、ジュンの面倒をみようとするが……。

本作でまず目を奪われるのは、ベン・ウィショーの素晴らしい演技だ。
ふとした視線の動きや声の揺れだけで愛する人を失った悲しみを繊細に伝え、瞬間のまなざしの強さに情熱を溢れさせるベンの演技に惹きつけられない観客はいないだろう。
これまで、18世紀や19世紀の青年やロックスターなどを特徴的なキャラクターが多かったベンだが、本作では現代のロンドンに暮らす普通の青年。等身大の佇まいを初めてスクリーンで見せているのも大きな魅力だ。また、ベン演じるリチャードの恋人の母親ジュンには、武侠映画の伝説のヒロインだったチェン・ペイペイ。ペイペイのイメージを一新する静かな演技とともに、リチャードの恋人を演じる新人アンドリュー・レオンの美しさも要チェックだ。
監督は、カンボジア生まれでロンドン・ベースの若手ホン・カウ、待望の長編第一作。
本作はロンドンを拠点に活動する若手フィルム・メイカーを対象に製作支援するスキーム「マイクロウェーヴ」によって作られた。監督自身の母への想いを重ねあわせた物語で、主演のベンやペイペイ始め、すべてのスタッフ・キャストが「素晴らしい脚本!」と声を揃え、その繊細でエモーショナルな演出は第一作とは思えないほどの完成度で「ホン・カウの素晴らしいデビュー!」(Variety)と絶賛を集めた。デビュー作として異例のオープニング作品に選ばれたサンダンス映画祭では、見事撮影賞を受賞、ブリティッシュ・インディペンデント・アワードやBAFTA英国アカデミー賞でも多数ノミネートされている。

予告編は、中国系のジュンが愛する李香蘭(山口淑子)が歌う名曲「夜来香」で幕開けし、ジュンとリチャードとの関係性が明かされていくなかで、息子の真実を知らない母と、真実を隠し続けようとする青年の葛藤を垣間見せる。恋人への愛の大きさゆえに、感極まって言葉を失い、涙するリチャードの姿に予告編だけでも胸しめつけられる。あなたが<母>なら?あなたが<恋人>なら?という問いに、本編を見てぜひ答えを探してほしい。

予告編::https://www.youtube.com/watch?v=_Hy3LH-kj-c

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執筆者

Yasuhiro Togawa