良質な未公開作品の発見シリーズ第一弾として、先どり、蔵出し、カルト感が漂う、何れもいまどきジャパンの青き春を描いたラインアップ。登場する13歳の中学生から20代中頃までの若者層は、みな不安感にさいなまれながらも、新たな発見の場に移り行く…。

◎「スーパーローテーション」もうベテランの実力派監督の域だといってもいいだろう斎藤久志作品は、演劇学校に通うヒロインの恋愛の心変わりを計算された繊細さで描く秀作。
◎「つまさき」08年に撮影され14年に完成した加瀬仁美作品は、行動する引きこもりの中学生を全編手持ちカメラの一人称で描いた執念の力作。
◎「ダムライフ」そして今回のテーマである<Open the Cover>にもっとも相応しい北川仁作品は、新たな才能のフタを開けることになるだろう。疑うことを知らないルール順応型の未熟な青年の破滅と再生を描いた問題作。実家の寺で僧侶をしながら、監督の道を歩むユニークでタフな人材である。
この機会に三様のインディペンデント・スピリットに出会ってみてはいかがだろうか。

「ダムライフ」
ダムライフDamu Life 2011 / カラー / 84分
監督・脚本・撮影・編集 : 北川仁
出演 : 笠継景太、菅原佳子、米元信太郎、小野孝弘、武井哲郎、菊池翔空
子供の頃、妹を殺してしまいトラウマを持って育ったロボットのような青年。ダム工事の現場で働き始めるとすぐにいじめにあうが、やがて友人ができる。偶然に起きた同僚の転落死をきっかけに事態は急変、青年はトンデモ大殺戮を引き起こしてしまう。引きの演出、狙った画面、意外な展開…北川仁監督の強烈な長編デビュー作!
第33回 PFFアワード2011(ぴあフィルムフェスティバル) グランプリ作品
第24回東京国際映画祭 日本映画・ある視点出品
釜山国際映画2011 ニューカレンツ部門ノミネート出品

「スーパーローテション」
スーパーローテーションSuper Rotation2011 / カラー / 77分
学校じゃ学べない呼吸とか空気感。
「なにもこわいことはない」など実力派監督作、念願の蔵出し上映。
監督 : 斎藤久志 脚本 : 加瀬仁美 撮影 : 水口智之 編集: 小林由加子
出演 : 下村響子、藤原慧、小泉将臣、倉持幸歩、中村圭吾、安藤尋
「はいかぶり姫物語」(86)や「いたいふたり」(02)で、若い男女のありようを優れた洞察力で描いてきたPFF出身の斎藤久志監督の軽やかな恋愛劇。演劇学校に通うヒロインの恋愛の心変わりを計算された繊細さで描いた秀作。ヒロインの心変わりをユーモアでほろ苦く切り撮った演出は良質の映画を撮れる監督として再評価が望まれる。劇中、ソン・イルゴン監督の傑作「マジシャンズ」(05)へのオマージュが見える。
日本映画学校 25期俳優科卒業ドラマ作品

「つまさき」
そっかワタシワラエルんだ…
13歳の中学生を一人称で描く、注目の女性監督デビュー作!
つまさきTsuma-saki  爪先 監督・脚本 : 加瀬仁美
プロデューサー : 斎藤久志 撮影 : 岩永洋 照明 : 久保田貴之
出演 : 河野桜、圓若創、松井美波、小川智子、川瀬陽太、クノ真季子
相手がいなくなった交換日記…女子中学生の○○○は、大好きな友達が拒食症で入院したことで心の変化が訪れる。中年男との寒々しい出会いや気になるイケメンのクラスメート。抜けるような空と孤独感をキーワードに、少女の魂の成長を全編手持ちのカメラで温かく見守る視点は、女性監督群の新たな一翼となるだろう。

3月21日(土)より k‘scinema にて特集上映

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執筆者

Yasuhiro TogawaYasuhiro TogawaYasuhiro Togawa