現代ポーランド映画を代表する監督、クシシュトフ・クラウゼが、昨12月24日、前立腺ガンのため、死去した。まだ61歳の若さだった。日本での劇場公開作は過去には『ニキフォル 知られざる天才画家の肖像』(04)のみだが、知られざる名匠だった。

クラウゼ監督は、1953年、ワルシャワ生まれ。88年に長編映画デビューし、ポーランドで最も権威のあるグディニャ・ポーランド映画祭で新人監督賞を受賞以来、寡作ながら、すべての監督作品が国際的な映画祭で受賞、ポーランドを代表する監督の一人だった。グディニャ・ポーランド映画祭では、1999年の『借金』、2006年の『救世主広場』で2度もグランプリに輝き、日本公開された『ニキフォル 知られざる天才画家の肖像』(2004)では、カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭やシカゴ国際映画祭でグランプリを受賞している。

2000年に手掛けたテレビ映画で脚本を担当した妻ヨアンナ・コス=クラウゼとは、『ニキフォル』では共同脚本、『救世主広場』で共同監督となり、二人で新たな映画世界をつくりあげた。クラウゼ監督の遺作は、妻ヨアンナとの共同監督になる『パプーシャの黒い瞳』(2013)。歴史上初めてのジプシー女性詩人と言われるブロニスワヴァ・ヴァイス、愛称パプーシャ(ジプシーの言葉で人形の意味)の生涯を、戦前からナチスの時代、戦後ポーランドの誕生と半世紀を越えるポーランド現代史を重ねて描き、カルロヴィ・ヴァリ、テサロニキなどヨーロッパの映画祭で数々の賞に輝いた。圧倒されるほどに美しいモノクローム映像は、「すべてのシーンが光と影の絵画のような傑作」(ハリウッド・リポーター)と絶賛された。『パプーシャの黒い瞳』は、日本では2015年4月4日(土)より岩波ホールほか全国順次で公開が決定している。

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執筆者

Yasuhiro Togawa