このたび10月末に、映画『愛を積むひと』(朝原雄三監督)が無事にクランクアップを迎えました。
佐藤浩市と樋口可南子が第二の人生を歩む夫婦を演じる本作は、北海道の大地に本建築のオープンセットを建てて、およそ1年に亘る撮影を敢行しました。
鮮やかな緑に覆われた美瑛の丘を、マルチコプターを駆使して4Kのカメラで空撮したり、日本百名山のひとつである十勝岳で登山撮影に挑むなど、スケールの大きな風景がスクリーンいっぱいに広がります。そして、北海道の雄大な自然と豊かな四季を丁寧に紡ぎ出しながら、夫婦の愛、家族の絆を描いています。

〇クランクアップに際してのコメント

【佐藤浩市】
隣にいる人を受け入れられる、そういう優しい気持ちになってくれたら足掛け4か月の撮影は、夏編と秋編との間が2か月ぐらい空いていました。
継続して撮影した方がメンタリティとしては楽な部分もあるのですが、今回は逆に時間が空いたおかげで振り返って整理することができ、俯瞰視できたので良かったな、と思いました。
美瑛の大地に本建築で家を作って、そのオープンセットでほとんどのロケをしたので、美瑛の風光明媚な風景、人々の優しさ、空気感は確実にフィルムに焼き付いていると思います。
可南子さんとの共演は、昔の日本映画を知っている者同士ということで、安心してキャッチボールができました。朝原組は「釣りバカ日誌」で三國と一緒にやってきたスタッフが多いので、みんな僕の後ろに三國を見るだろうし、逆に言うと僕は朝原さん含めて、スタッフの後ろにまた三國を見る。そんな、普段なかなか無い相関性がありました。
僕が演じた篤史は、いい人なんです。いい人なんだけれど、単純に人を許せなかったりとか、そういった狭いところで生きてしまうところがある。やっぱり、“人を許す”って大変な事なんですよね。
それなりに人生経験を積んできた人間なのに、なかなか難しい。
“人を許す”ことで、自分自身が前向きになれるという、そのことが上手くスクリーンに出てくれればいいなと思いますし、今回僕の中では、そのことがテーマとして一番大きかったなという気がします。
あとは、お互いを受け入れるということですよね。この映画を観てくれて、なんとなく隣にいる人を受け入れられるっていうかな、そういう、少し優しい気持ちになってくれたら嬉しいです。

【樋口可南子】
苦労はたくさんあったのに、純な気持ちを失わないこの夫婦は、 つくづくいいなぁと思いました
美しい大自然の中で、静かに戦ったという感じ。
命の時間が長くないと知った妻は、残された時間をどう夫と過ごすのだろう?
自分のため、夫のため、娘のため、何をしたいのだろう?
ロケの間、ずーっと考えていたような気がします。
実は、石塀を夫に作って欲しいという希望を出すところが、とりわけ難しかった。
この突飛な希望って大丈夫なのかなぁと思っていたのですが、浩市さんの石を積む姿を見ていたら、なんだか妙に納得してしまいました。
私の答えは、言いません。
映画を観て下さる方からもいろんな答えが出そうで、今から楽しみです。
演じ終えて、 苦労はたくさんあったのに、純な気持ちを失わないこの夫婦は、つくづくいいなぁと思いました。
純な夫婦。
こうなりたいなー。
この美しい話を成立させるためにがんばってくださった朝原組の心優しいスタッフ、いろいろ助けて下さった美瑛の皆様に、心より感謝してます。

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執筆者

Yasuhiro Togawa