戦後フランスの英雄となった少年ギィ・モケ。サルコジ大統領が国民に大批判された大失態—-ドイツの名匠シュレンドルフはなぜギィ・モケを、英雄ではない普通の少年として描いたのか?そしてなぜ映画化を有名フランス人監督に大反対されたのか?

ナチ占領下フランス。1人のドイツ将校が暗殺される。ヒトラーは即座に、報復として、収容所のフランス人150名の銃殺を命令。パリ司令部のドイツ将校たち、ドイツ軍の下で働くフランスの役人たち、誰もがヒトラーの命令を回避しようとするが、動き始めた歯車を誰も止める事はできない。事件からわずか2日後の10月22日。シャトーブリアン郡の収容所から最初の人質が選ばれ、処刑のときが迫る…。
犠牲者の中で最も若かった17歳の少年ギィ・モケを、戦後フランスの英雄にした有名な史実。それから70年以上が経ち、ドイツの名匠フォルカー・シュレンドルフがこの史実を映画化。しかし、監督はギィ・モケを英雄として描かなかった。果たしてその意図は?

以下シュレンドルフ監督からのメッセージ:
「2007年、大統領になったサルコジは、国内のすべての学校で、モケの遺書を虐殺の日に朗読するよう指示を出しました。この強制的な指示は教師を始めとする国民に大きな批判を浴び、のちに撤回されましたが、モケはフランス中の注目を集めました。
私の友人であるフランス人監督ベルトラン・タヴェルニエは、すでに進んでいたこの映画の企画について知ると、絶対やるべきではないと言って来ました。ドイツ人のお前がモケに手を出したら何が起こるかわからないと。しかし、私の興味はモケよりもむしろ、上からの命令を拒否することができない人間たちでしたし、モケを犠牲者の中の1人である普通の少年として描くことで、他の犠牲者たちを忘却の中から甦らせることもできたと思います。幸いなことにこの映画は、特にフランスでは大成功でした。長くアメリカで仕事をし、ドイツ統一後は映画スタジオ(スタジオ・バーベルスベルク)の所長をしていたので、フランスの映画界は私を忘れてしまっていましたが、大歓迎してくれました。日本のみなさんにも私の映画を再発見してほしいですね」。

いま再び関心を集めるナチ占領下のフランス。ドイツ人監督が「独仏和解」のメッセージを込めて。

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執筆者

Yasuhiro Togawa