とほくまでゆくんだ——。

 映画監督鴨田好史は、日活の契約助監督として、日活ロマンポルノの最盛期を支えてきました。とりわけ、神代辰巳監督の傑作群のほとんどでチーフ助監督を務め、神代自身が深い思い入れを生涯にわたって語った『恋人たちは濡れた』(1973年)や、神代のフィルモグラフィの中でも異形の名作として名高い『濡れた欲情 特出し21人』(1974年)などの脚本も執筆しています。

 しかし、鴨田は日活で一本立ちすることなく、自主映画として制作した『精霊たちの祭』(1979年)がはじめての監督作品になりました。上映会場の確保にすら苦労したその作品の後で、80年代前半にはロマンポルノ(ただし、ピンク映画のプロダクションの製作による日活買い取り作品)を量産するものの、再び神代組の助監督になります。そして、神代の遺作となった『インモラル・淫らな関係』(1995年)でプロデューサー兼チーフ助監督を務めた後、その残フィルムで、短篇『路上』を監督しました。その後、Vシネマで数本を撮り上げましたが、1997年の『聖少女 濡れた花園』を最後に、映画を監督する機会はありませんでした。鴨田は長く、自らの青春を投影した『遠くまで行くんだ』という作品の企画を温めていましたが、結局、この作品も、鴨田の手で映画化されることはありませんでした。

 行く先が定かならず、酒とともに無頼の生を送りながら、映画への熱情だけは決して失うことのなかった鴨田のもとには、若き相米慎二や根岸吉太郎ら、多くの映画人が集いました。ここ京都にも、彼を慕い、彼とともに映画を作った人たちがいます。
 一周忌を機に、再上映されることのほとんどなかった鴨田の作品を、ここ京都で回顧上映し、多くのゲストを交えて、彼の映画への熱情を改めて確認したいと思います。

【映画監督鴨田好史 一周忌/鴨田好史レトロスペクティブ in 京都】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2014年9月27日(土)〜10月3日(金)  会場:京都みなみ会館
http://kyoto-minamikaikan.jp/archives/16851

《上映スケジュール(予定)》

●9月27日(土)
16:10- 『恋人たちは濡れた』(1973年/監督:神代辰巳/カラー/35mm/76分)
ゲスト:白鳥あかね(スクリプター、脚本家)+根岸吉太郎(映画監督、東北芸術工科大学学長)

●9月28日(日)
16:10- 『ドキュメント・ポルノ 屋台売春』(1982年/カラー/35mm/58分) ※ニュープリント
『遠くまで行くんだ 終着点だろうか!(予告篇)』(2013年/カラー/DVD/30分/編集:安田哲、木村健二)

●9月29日(月)
19:50- 『濡れた欲情 特出し21人』(1974年/監督:神代辰巳/カラー/35mm/77分)

●9月30日(火)
19:50- 『ドキュメント・ポルノ 屋台売春』(1982年/カラー/35mm/58分) ※ニュープリント
ゲスト:寺脇研(映画評論家、京都造形芸術大学教授)+吉沢由起(女優、『屋台売春』出演)

●10月1日(水)
19:50- 『路上』(1996年/カラー/16mm/42分)
    『京極真珠』(1997年/監督:佐藤訪米/カラー/16mm/60分)
ゲスト:佐藤訪米(映画監督)+横田直寿(JAZZ IN ろくでなし店主)

●10月2日(木)
19:50- 『精霊たちの祭』(1979年/カラー/16mm/70分)

●10月3日(金)
19:50- 『ドキュメント・ポルノ 屋台売春』(1982年/カラー/35mm/58分) ※ニュープリント
『追悼・鴨田好史』(2013年/カラー/DVD/22分/監督:友利栄太郎)

《ゲスト(予定)》

白鳥あかね(スクリプター、脚本家)
根岸吉太郎(映画監督、東北芸術工科大学学長)
寺脇研(映画評論家、京都造形芸術大学教授)
吉沢由起(女優)
佐藤訪米(映画監督)
横田直寿(JAZZ IN ろくでなし店主)

企画 ベンゲット・リターンズ
会場 京都みなみ会館
日時 2014年9月27日(土)〜10月3日(金)
入場料 各回一般1,300円/シニア1,100円/学生・会員1,000円(当日券のみ)
※プリントの劣化によって、お見苦しい箇所がございます。予めご了承ください。
※上映分数は、記載のものと異なることがあります。
※やむを得ぬ事情により、ゲストが変更になる可能性があります。

《鴨田好史(かもだ・よしふみ)プロフィール》

1946年5月10日愛媛県生まれ。早稲田大学在学中に、日活撮影所にもぐりこみ、師である神代辰巳をはじめ、田中登、小沼勝らの助監督を務める。
青少年によるミュージカル劇団として1967年に結成された「どんぐりコール」が製作母体になった『精霊たちの祭』(1979年)でデビュー。
1981年、にっかつロマンポルノ作品(ただし、外部製作の買い取り作品)として、『密室ドキュメント 指と舌』を監督し、立て続けに「ドキュメント」シリーズを撮り上げる。
80年代半ば以降、再び神代辰巳の助監督を務めるとともに、プロデュースも兼任した神代の遺作『インモラル・淫らな関係』(1995年)の残フィルムを使って、実験的な短篇『路上』(1996年)を監督した。
同時期に、Vシネマを数本手がけるが、並行して、Vシネマ作品で助監督を務めた、京都のインディペンデント作家佐藤訪米の『京極真珠』(1997年)をプロデュース。
その後、故郷に戻り、新作の企画を抱えながら、自給自足の生活を続けた。2013年9月26日永眠。

《鴨田好史フィルモグラフィ》

【監督作品】
精霊たちの祭(1979年)
密室ドキュメント 指と舌(1981年)
ドキュメント・ポルノ 指いじめ(1981年)
ドキュメント・ポルノ 屋台売春(1982年)
未亡人アパート 娘もよろしく(1982年)
タクシー・ドライバー 白昼の陶酔(1983年)
変態バスト 暴行性奴隷(1983年)
もっともっと愛を(1984年)
路上(1996年)
日本女刑罰史(1995年/のちに改題して『女囚拷問責め』1998年)
極妻のエロス 愛欲の生態(1996年)
聖少女 濡れた花園(1997年)

【脚本作品】
恋人たちは濡れた(1973年/監督:神代辰巳)
濡れた欲情 特出し21人(1974年/監督:神代辰巳)
壇の浦夜枕合戦記(1977年/監督:神代辰巳)
【製作作品】
インモラル・淫らな関係(1995年/監督:神代辰巳)
京極真珠(1997年/監督:佐藤訪米)

執筆者

デューイ松田デューイ松田デューイ松田デューイ松田デューイ松田デューイ松田デューイ松田デューイ松田デューイ松田デューイ松田デューイ松田デューイ松田