このたび12月よりポレポレ東中野ほか全国順次にて、ドキュメンタリー映画『ふたつの祖国、ひとつの愛〜イ・ジュンソプの妻〜』(酒井充子監督作)を公開する運びとなりました。

1940年代、世界が対立を深めた時代に恋に落ちた韓国の国民的画家、イ・ジュンソプと三井財閥企業の役員を父に持つ令嬢、山本方子。歴史に引き裂かれながらも貫かれた70年の一途な愛を描いています。

第二次世界大戦のさなか、三井財閥企業の役員を父に持つ令嬢・山本方子は日本の美術学校で出会った朝鮮からの留学生イ・ジュンソプと恋に落ちる。空襲が激化し戦況が最終局面を迎えた1945年、方子は命がけで海を渡り、故郷に戻ったジュンソプのもとへ嫁いでいった。幸せな時を過ごしたのもつかの間、日本の敗戦後に勃発した朝鮮戦争の戦火と貧困に追われ、再び日本と朝鮮の地で離れ離れに。それでもふたりの愛は失われず、唯一の通信手段だった手紙は200通以上に及んだ。アジアの芸術家として初めてニューヨーク近代美術館〈MoMA〉に作品が収蔵され、遺された絵画は今や億の値がつく画家、イ・ジュンソプ。韓国では知らない者はいないジュンソプは、生前キャンバスも買えないほど貧しく、39歳で息を引き取った。彼が最後に会いたいと願ったのは、日本人の妻・方子だった。監督は、『台湾人生』『台湾アイデンティティー』で台湾の「日本語世代」の取材を通して日本と台湾の解けない関係性を描き出し、ロングラン・ヒットを記録した酒井充子。最新作では、悪化の一途をたどる日韓関係を、一組の夫婦を通して見つめ直す。国家の対立が先鋭化した時代に、民族や政治、思想を乗り越えて信頼を築いたふたりの人生が私たちに問いかけることとは——。

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執筆者

Yasuhiro Togawa