大人も子どもも共有できる優れた作品に送られる文学賞「第 28 回坪田譲治文学賞」に輝いた小説「きみはいい子」(著:中脇初枝 (ポプラ社刊))。
このたび、「きみはいい子」の映画化が決定。本著はある雨の日の夕方、ある同じ町を舞台に、誰かのたったひとことや、ほんの少しの思いやりが生むかもしれない光を描き出した五篇連作短篇集のヒューマン・ドラマ。そのうち映画ではサンタさんの来ない家」「べっぴんさん」「こんにちは、さようなら」を描く。
幼児虐待、虐待の連鎖、ネグレクト、いじめ、学級崩壊——。家庭から、学校から、地域から薄れていく「絆」と「思いやり」。誰かの子どもだったことがあり、誰かの隣人であるすべての人にとって、人ごとではいられない問題を描き出す。
監督には、現在公開中の『そこのみにて輝く』がモントリオール世界映画祭ワールドコンペ部門へ正式出品が決まり、ますます注目の集まる呉美保監督。脚本には、呉監督と『そこのみにて輝く』でタッグを組んだ、高田亮が担当。
主演には、高良健吾。デビュー以来、数々の映画に出演し、評価を重ねる。今後さらに期待の高まる若手俳優だ。
また、ヒロインには、尾野真千子を迎える。昨年『そして父になる』では病院で生まれたばかりの子供を取り違えられ苦悩する母を演じた彼女が、一転して虐待母を演じることになる。
本作は、6 月下旬より、北海道小樽にてクランクイン予定。

■高良健吾/岡野匡(おかの・ただし) 役
【役柄について】
新人の小学校教師。何不自由のない家庭で苦労せずに育った真面目な青年。学年主任に言われる通りに子供たちに接するが、日々、なかなか上手く運ばない。トイレに行きたいと言えずにおもらししてしまう児童、クラスの女の子たちから「キモイ」と言われる女子児童、クラスメイトをいじめる児童…。やがて、クラスの子供たちに接するなかで、この子たちひとりひとりに誰かの愛情に包まれていることに気付く。そして、17 時までは家に帰ってくるなと言われ、校庭で時計を見上げて待つ児童。義父から虐待を受けているこの児童に手を差し伸べるべく、勇気を振り絞る。

先生になっても、見えてなかった、何もわかっていなかった。そのままクラスは学級崩壊していく。
それでも、やっと気付いたことがある。「きみはいい子だよ。」この子のためにだけでも頑張りたい。
明日も、学校に来よう。この子のために、学校に行こう—— (「きみはいい子 [サンタさんの来ない家]」より)

■尾野真千子/雅美(まさみ) 役
【役柄について】
3 歳児、あやねの母。公園ではほかのママたちと笑顔で接するが、家に戻ると、一変する。あやねの髪をつかんでひきずり、リビングのじゅうたんに放り投げ、ふとももをたたき、蹴って転がす。背中を蹴る。何度も蹴る。ほっぺをつねる。頭をひっぱたく・・・。実は、雅美も子供の頃に虐待を受けていた。その記憶が虐待の連鎖を引き起こしていたのだ。

あたしはみんな覚えている。小さな小さな手。のばすと、大きな手ではらいのけられた。
手をつないでほしかっただけなのに。小さな手は、大きくなり、今、小さな体を傷つける——
この子を殴る手が止まらない—— (「きみはいい子 [べっぴんさん]」より)

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執筆者

Yasuhiro Togawa