世代から世代へ受け継がれる伝統
 『ジプシー・フラメンコ』は、固い絆で結ばれたバルセロナのジプシー・コミュニティーの中で、フラメンコという遺産が、どのように受け継がれていくのかを、鮮やかに映し出した作品である。それは同時に、フラメンコの魅力の源泉を辿ることに繋がってゆく。
フラメンコはスペイン社会の片隅の深い部分に根づいている生きた芸術だ。この伝統的な音楽と踊りは、ダンスの学校や音楽の本で学べるものではなく、ジプシー・コミュニティーの中で、父から息子へ、母から娘へと血統を通して独占的に継承される世界でも数少ない芸術の一つと言えよう。フラメンコはジプシーの一族の中で守られ、タブラオ(※①)で磨き上げられ、その芸術性が街角で完成されてきたのだ。
 『ジプシー・フラメンコ』は、若き踊り手カリメ・アマジャと5歳の少年フアニート・マンサーノの二人の歩みを追う。カリメは、才能ある新進のミュージシャンや踊り手と共に、ジプシーのフラメンコと、バルセロナのルンバの伝統を融合させた舞台を創り上げていく。フアニートは、腎臓に問題があると心配する両親をよそに、いつか舞台で踊る日を夢見てフラメンコ・シューズを手に入れる。彼らがそれぞれの人生で経験することは、生き続ける伝統を発見する旅でもある。

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執筆者

Yasuhiro Togawa