主演の楓役は映画・テレビ・舞台に活躍中、今年は映画が立て続けに公開される我妻三輪子。恋と人生の岐路に立つ喜びと不安、とまどいと哀しみを時に繊細に、時に力強く表現している。楓の憧れの人・拓也に『見えないほどの遠くの空を』『ほっとジョージア(CM)』の中村無何有、楓の兄・隆太に『恋の罪』の謎の男・カオル役で鮮烈デビューした小林竜樹、隆太の恋人・有希に『ヒミズ』以降、園子温組のレギュラーになった今村美乃。監督は『OLの愛汁 ラブジュース』が国内外で高い評価を受けた田尻裕司、脚本はコンビの西田直子。いまおかしんじ、田尻裕司、榎本敏郎、坂本礼の四人の監督による映像制作会社「冒険王」の記念すべき第一回製作作品です。

なんとなく美容師になって一年目の楓(我妻三輪子)は目標もなく、ただ仕事に流されている日々を送っている。そんなある日、幼なじみの看護師・拓也(中村無何有)が数年ぶりに街に帰ってきた。小さなころ、楓と兄の隆太(小林竜樹)は拓也といつも一緒で、楓にとって拓也は初恋の人だった。拓也のあたたかい励ましに、楓は真摯に仕事に向きあいはじめる。一方、隆太は近いうちに恋人の有希(今村美乃)と家庭を持とうとしていたが、彼女には別に恋人がいて、お腹の子どもの父親もその男だった。傷心の隆太の前に拓也が現れる。「別れちゃえよ、そんな女。俺なら、絶対、お前を裏切ったりしない……ずっと好きだったんだ」。拓也の気持ちを知った楓は思わぬ行動に出る…
 誰もが誰かを好きになることは止められない。他人からみれば取るに足らない出来事でも、恋の渦中の人にとっては粉々に砕かれるほどの衝撃。せつない思いのかけ違いが感情のさざ波となって幾重にも拡がるとき、恋をめぐる小さくて大きなドラマが始まる——。

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執筆者

Yasuhiro Togawa