アメリカ史上最も長く支持された大統領フランクリン・D・ルーズベルト(FDR)を、コメディアンとしてスタートし『ゴーストバスターズ』シリーズ、『ロスト・イン・トランスレーション』(03)、『ムーンライズ・キングダム』(12)など、その後は多面的なキャラクター造りで俳優としても不動の人気を誇るビル・マーレイが演じ、第80回ゴールデン・グローブ賞にノミネートされた『私が愛した大統領』 が9月13日(金)より全国ロードショーとなる。

本作は、アカデミー賞®4冠に輝いた『英国王のスピーチ』で描かれたジョージ6世の、まさにその歴史的スピーチのきっかけとなった初めてのアメリカ訪問を軸に、FDRと彼を支えた女性たちの秘密がつまびらかになっていく大人のラブストーリーだ。
先日、公開に先駆けて行われた一般試写会でアンケートを実施。そこで「最も印象的だったシーンは?」の問いに多くの回答が寄せられたのが、「ホストであるFDRが、英国王夫妻へのおもてなしにと選んだアメリカ庶民の味・ホットドッグを食べる、ランチのシーン」だ。
「歴史の教科書では教えてくれない数々の出来事が観られた」、「FDRの名前は知っていたが、この映画で描かれているようなプライバシーは初めて知った!」「大統領も国王も皆人間」、「日本の首相との外交では、ありえない!」の声。

本篇のハイライトの一つでもあるこのシーンの背景には様々な思惑が交錯しており、表向きはFDRの妻エレノアの発案ということになっていた。
ジョージ6世夫妻の訪問は、第二次世界大戦突入前に、なんとしてもアメリカの援助を取り付けねばならない—という重大な目的があり、政治的に緊迫した局面であった。翌日のランチメニューとしてホットドッグが用意されることを聞いた英国王の妻エリザベスは、「馬鹿にしているわ!」と憤慨、ジョージ6世自身不安に駆られながらも、彼女をなだめる。そんな国王夫妻の寝室でのやりとりや人間らしい姿には、可笑しみがあり、歴史の裏側を覗き見るような、想像力をかきたてられるシーンとなっている。

ビル・マーレイは、「これまでオファーされた役の中で最も畏怖の念を抱いたキャラクターだった。僕も知らなかったこの物語は、私的な面を描き、人間らしさがあった」 と語る。

重度の障害者でありながら、10年以上にわたって国のリーダーであり続けた偉業の陰には、多くの女性たちの支えがあった。そしてホットドッグでもてなす、という大胆なアイディアとユーモア、様々な顔を持つ策士FDRの姿がそこにあったのだ。

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執筆者

Yasuhiro Togawa