2012年の東京国際映画祭でグランプリ&監督賞をダブル受賞した『もうひとりの息子』(10月シネスイッチ銀座他全国順次公開)の予告編が完成しました。

壁の<向こう側>と<こちら側>。紛争によって引き裂かれてきたイスラエルとパレスチナの子どもが、もし取り違えられ、18歳になる日まで、その事実に気づかずにいたとしたら。そんな衝撃的な題材を描いた本作。昨年、東京国際映画祭で上映された時の評判に加え、今年のカンヌ審査員賞を受賞した『そして父になる』と同じ“取り違え”が題材であることからも映画マスコミの間ではすでに注目度が高まっている。

完成した予告編は、取り違えの事実を医師から告知されるシーンから始まり、2組の家族の両親を演じる名優たちの表情からは怒り、悲しみ、不安が繊細に表現されて一気に引き込まれる。『そして父になる』との違いは、取り違えが、長く紛争がつづく2つの国の家族の間で起こることから、国の対立という大きな問題が家族の葛藤をさらに大きくしている事、取り違えられた息子たちがすでに18歳になっているため息子たち自身の悩みも強く伝わってくる事、そして「母親」の存在がより大きくフィーチャーされている事などがマスコミによって指摘されているが、予告編では、激しく言い争う父親たちの場面や、兄から「弟でも何でもない」と拒絶される場面、そして育てた子にも産んだ子にも愛情を感じている母親の姿が描かれ、本編の感動が伝わってくる。

そして映画の内容とともに注目したいのは、ナレーション。

目を閉じて聞いても感動してしまう、その美声の持ち主は海外TVドラマ『デスパレートな妻たち』『アグリー・ベティ』でのバネッサ・ウィリアムズの吹き替えで知られる人気声優・五十嵐麗さん。映画のキャストの繊細な名演にぴったりな、優しさ、悲しさ、そして希望まで感じさせる名ナレーションで予告編を盛り上げている。葛藤し、揺れ動き、彼らはどんな選択をするのだろう—という予告編最後の言葉そのままに、映画本編の展開が気になる予告編をぜひチェックして欲しい。

予告編::http://youtu.be/vUmYtate0PU

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執筆者

Yasuhiro Togawa