舞台となる廃校を求め、全国を探し歩いていた監督が、福島県大沼郡昭和村の旧喰丸小学校にたどり着いたのは、2009年1月。1980年に閉鎖されたこの廃校は解体が決まっていたが、監督の申し出に、村長をはじめとする村の人々が理解を示し、撮影終了までの校舎保存が決定。2009年夏から風景などの撮影を開始した。
 しかし、秋に予定されていたメインの撮影は、諸般の事情により一年延期に。その後も、四季ごとの風景の撮影は続けられて来たが、2010年秋のメイン撮影は、イチョウが色づく前に雪が降ってしまうという異常気象の影響により、開始2日前にして再びの中断。その後、脚本を春の設定に書き換え2011年5月の撮影再開に向けて準備を進めていた矢先の3月、あの大震災に見舞われた——。
 福島会津を舞台に、廃校となった学校で一人静かに暮らす年老いた元校長先生と、過疎が進むその村に暮らす人々の記憶を穏やかに優しく描く。作品の舞台となるのは、日本の原風景とも言われる奥会津の昭和村。1場面1場面が、絵画のように美しく、ゆったりと流れる時間の中に紡がれる人々の記憶の物語は、まさに大人のファンタジー。
  本作でメガホンをとったのは、「美式天然」で 第23回トリノ国際映画祭にて、史上初のグランプリ&最優秀観客賞のW受賞を果たし、その後も世界各国の映画祭に招かれ高い評価を得ている坪川拓史監督。主人公・野田を演じるのは実力派俳優、西島秀俊。野田を温かく見守る恩師の娘・リツコを日本の名女優、倍賞千恵子が演じている。

移り変わる日々のなか、無くなっていく「場所」と「記憶」の本質を優しい視線で描いた映画『ハーメルン』のポスタービジュアルが解禁となりました。

関連作品

http://data.cinematopics.com/?p=48825

執筆者

Yasuhiro Togawa