『オルランド』『タンゴ・レッスン』『耳に残るは君の歌声』『愛をつづる詩』。これまで美しい映像美だけでなく、人々の心と心の触れ合いを大胆な独創性で描き、観る者を魅了し続けてきた、イギリス人女性監督、サリー・ポッター。そんな彼女の最新作は、社会の矛盾や政治不安など刻々と変わりゆく時代を生き抜かねばならない、思春期の少女の煩悶、葛藤、愛などが絡み合い揺れ動く心情と、成長していく様を描いた感動作『GINGER & ROSA』の邦題が『ジンジャーの朝 〜さよなら、わたしが愛した世界』になり、8月シアター・イメージフォーラムにて公開の運びとなりました。

60年代の社会が不安と変貌で揺れる雰囲気を見事に再現し、女性監督であり自らも吟遊詩人であるサリー・ポッター監督ならではの描写で、常に一緒だった2人の少女の姿を微笑ましく、そしてそんな関係に亀裂が生まれてしまう姿を見事なほど繊細に描いた。そして、自分を取り巻く不秩序で矛盾だらけの世界を受け入れ、それでも懸命に生きていくという自らの答えを詩に綴るラストは、観る者の心を深く突き刺すだろう。

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執筆者

Yasuhiro Togawa